QNA読解:4.5 出発(2)
上位エントリー:Word Whitt: The Queueing Network Analyzerの構成
「QNA読解:4.5 出発(1)」の続きです。
このセクションでは式(39)
- ・・・・(39)
をさらに改良することを試みています。しかし、それは成功していません。それでもこの試みで出てきた式はのちのセクションでも使われているので、ここで取り上げます。
(39)のさらなる改良のための基礎はWhitt*1における出発過程の漸近解析である。この漸近解析はいくつかの場合、出発過程の変動は到着過程とサービス過程により複雑な仕方で依存していることを示している。・・・・・
と論文は述べます。そして、出発過程は次のノードでの利用率によって調整すべきだ、と論じています。
例えば、2つの待ち行列が直列になってパラメータ、、、、、を持つ場合を考察しよう。もしとする一方でを変えないままにするならば、で2番目の待ち行列は高負荷になる。そのような高負荷条件の下では、2番目のノードの混雑尺度は、仮に最初の設備が取り除かれた場合と漸近的に同じであることが、つまり、あたかも2番目のノードへの到着過程が最初のノードへの到着過程であるかのようであることが、示されてきた。*2
私にはこれがよく理解できていません。出発過程そのものが次のノードの利用率に影響される、というのは理に合わない話です。おそらくここで言いたいのは、出発過程そのものが影響を受けるのではなくて、結果としての次ノードでの混雑尺度(例えば、平均待ち時間)は、次ノードへの到着過程を(=当該ノードでの出発過程を)、当該過程での到着過程に置き換えたほうがよい近似になることが、何らかの証拠があって分かっている、というのでしょう。一般に次ノードは複数あるので、当該ノードでの出発過程の2乗変動係数を分岐させたものに対してこのような補正をすることになります。
まず、話を簡単にするために分岐のない場合を考えます。当該ノードを、次のノードをで示します。そしてからへの流れの2乗変動係数をで示します。(39)で述べた近似に従えば
- ・・・・(ア)
となります。一方、次ノードの利用率が高負荷の時、すなわちの時は、(ア)よりもむしろ、当該ノードでの到着過程の2乗変動係数をそのまま用いたほうがよい、ということです。よって
- ・・・・(イ)
となります。
そこで、(ア)と(イ)の凸結合
-
- ・・・・(ウ)
を考え、あとは凸結合の重み係数を見出そうというのがWhittの考えです。そしてはでになるようなものでなければなりません。ところがこのようながまだ見つからないそうです。そのため、この論文ではこれは試みでしかありません。
さて、これを分岐がある場合に拡張します。「QNA読解:4.4 分岐」での結論から、(ア)(イ)はそれぞれ
-
- ・・・・(ア’)
- ・・・・(イ’)
になります。よって(ウ)も
-
- ・・・・(41)
になります。しかし、適切なの式が見つかっていないのは同様です。
さて、さらに「QNA読解:4.5 出発(1)」の終わりのほうで述べた処理時間が確定的な場合、出発過程の2乗変動係数を過少に見積る傾向への補正を考慮すると(41)は
-
- ・・・・(エ)
になります。(41)と(エ)は出発と分岐を組み合わせた式です。さらに、これに重ね合せを組み合わせると、目的とする「トラフィック変動方程式」が得られます。
次の「4.5 客の生成と組合せ」は飛ばします。「QNA読解:4.7 総合」に続きます。