古語拾遺
- 作者: 斎部広成
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2004/02/17
- メディア: 文庫
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日本神話の原典になるものは「古事記」と「日本書紀」が主なものですが、このほかに「風土記」には地方の断片的な神話があり、また「万葉集」にも神話を背景にした歌があったりします。この「古語拾遺」は807年の撰上で、712年の古事記、720年の日本書紀よりは遅いですが、そしてこの2書に比べて分量がかなり少なめですが、日本神話への手がかりとなる本の一つです。「古事記」「日本書紀」が公的な立場から編集されているのに対し、古語拾遺は斎部(いんべ)氏の立場から斎部広成が作成し平城天皇に提出したものです。
ここでは私のアンテナにかかった3つの箇所をご紹介します。
- 1.天岩戸の神話でアマテラスが岩戸から出てきた場面での神々が喜んだ時の言葉
- 2.祟神天皇の時、宮中からアマテラスオオミカミとクサナギのツルギを外に移す、ということが持ち上がった。(この後、アマテラスはあちこちさ迷ったのち、最終的に伊勢に落ち着きます。) その時の宮人たちの歌
- 宮人の 大寄すがらに いさとほし 行(ゆ)きのよろしも 大寄すがらに
- 意味不明ながら言霊を感じます。西宮一民氏の訓読文補注によればおそらく「大宮人が大勢寄せ集められているので、神様の御心も十分奮い立って、御遷座がよろしく行われたよ」という意味だろうとのことです。
- 宮人の 大寄すがらに いさとほし 行(ゆ)きのよろしも 大寄すがらに
- 3.伊勢神宮の起源説話に出てくる「幽契(かくれたるちぎり)」
始め天上(あめ)に在(ましま)すときに、預(あらかじ)め幽(かく)れたる契(ちぎり)を結びて、衢(ちまた)の神の先(まづ)降ること、深き以(ゆゑ)有り。
(天孫降臨の時に猿田彦の神が先に伊勢に下ったのには、天上にいた時の秘密の深い意味の約束があってのことだった。それでのちにアマテラスの社がそこに建てられることになったのだ。)