ジャクソンネットワークの積形式解の存在(3)

ジャクソンネットワークの積形式解の存在(2)」の続きです。
今までの考察で、局所平衡方程式は

  • p(\vec~k(+j))\frac{min(k_j+1,m_j)}{t_{ej}}=p(\vec~k)\lambda_j+\Bigsum_{i=1}^Np(\vec~k(+i))\frac{min(k_i+1,m_i)}{t_{ei}}r_{ij}・・・・・・(6)

でした。
ジャクソンネットワークの積形式解の存在(1)」の式(5)

  • \frac{1}{t_{ej}}=\frac{\theta_j}{m_ju_j}・・・・・・(5)

を式(6)に代入して

  • p(\vec~k(+j))\frac{min(k_j+1,m_j)\theta_j}{m_ju_j}=p(\vec~k)\lambda_j+\Bigsum_{i=1}^Np(\vec~k(+i))\frac{min(k_i+1,m_i)\theta_i}{m_iu_i}r_{ij}・・・・・・(12)

式(12)を「ジャクソンネットワークの積形式解の存在(1)」の式(1)

  • \theta_j=\lambda_j+\Bigsum_{i=1}^N\theta_ir_{ij}・・・・・・(1)

と比較すると、(1)で

  • \theta_j{\rightar}p(\vec~k(+j))\frac{min(k_j+1,m_j)\theta_j}{m_ju_j}
  • \lambda_j{\rightar}p(\vec~k)\lambda_j

と置き換えると(12)になることが分かるので、「ジャクソンネットワークの積形式解の存在(1)」の式(2)

  • \theta_j=f_j(\vec~\lambda,R)・・・・・・(2)

f_j()を用いれば、式(12)は

  • p(\vec~k(+j))\frac{min(k_j+1,m_j)\theta_j}{m_ju_j}=f_j(p(\vec~k)\vec~\lambda,R)・・・・・・(13)

という形に解けるはずです。式(13)の右辺は「ジャクソンネットワークの積形式解の存在(1)」の式(3)

  • f_j(a\vec~\lambda,R)=af_j(\vec~\lambda,R)・・・・・・(3)

を用いて

  • f_j(p(\vec~k)\vec~\lambda,R)=p(\vec~k)f_j(\vec~\lambda,R)

となります。よって式(13)は以下のようになります。

  • p(\vec~k(+j))\frac{min(k_j+1,m_j)\theta_j}{m_ju_j}=p(\vec~k)f_j(\vec~\lambda,R)・・・・・・(14)

式(14)に式(2)を代入して

  • p(\vec~k(+j))\frac{min(k_j+1,m_j)\theta_j}{m_ju_j}=p(\vec~k)\theta_j
  • p(\vec~k(+j))\frac{min(k_j+1,m_j)}{m_ju_j}=p(\vec~k)
  • p(\vec~k(+j))=\frac{m_ju_j}{min(k_j+1,m_j)}p(\vec~k)・・・・・・(15)

式(15)は、「M/M/mにおける待ち時間の式の導出(2)」における式(8)と式(9)と本質的に同じなので、同様の考察から、その利用率u_jに等しいM/M/m_j待ち行列における状態kの発生確率をp\left{M/M/m_j,u_j\right}(k)で表すと

  • p(\vec~k)=c_jp\left{M/M/m_j,u_j\right}(k_j)p(\vec~k(0j))・・・・・・(16)

となることが導けます。ただし状態\vec~k(0j)は状態\vec~kj番目の要素k_jの値をゼロに置き換えた状態を表し、c_jは規格化定数を表します。以上の考察を全てのステーションについて行えば、

  • p(\vec~k)=p(\vec~0)\prod_{i=1}^Nc_ip\left{M/M/m_i,u_i\right}(k_i)・・・・・・(17)

となることが分かります。ただし、状態\vec~0は、全てのステーションジョブ数がゼロである状態を表します。
次に、規格化定数を求めます。まず、

  • \Bigsum_{k_1=0}^{\infty}\Bigsum_{k_2=0}^{\infty}....\Bigsum_{k_N=0}^{\infty}p(\vec~k)=1・・・・・・(18)

でなければなりません。(18)に(17)を代入すると

  • p(\vec~0)\prod_{i=1}^Nc_i\Bigsum_{k_i=0}^{\infty}p\left{M/M/m_i,u_i\right}(k_i)=1・・・・・・(19)

ところがiの値がどの値であっても

  • \Bigsum_{k_i=0}^{\infty}p\left{M/M/m_i,u_i\right}(k_i)=1

が成り立つので、式(19)は

  • p(\vec~0)\prod_{i=1}^Nc_i=1・・・・・・(20)

となります。式(17)は

  • p(\vec~k)=p(\vec~0)\prod_{i=1}^Nc_i\prod_{i=1}^Np\left{M/M/m_i,u_i\right}(k_i)・・・・・・(21)

と書けるので、式(20)を用いれば

  • p(\vec~k)=\prod_{i=1}^Np\left{M/M/m_i,u_i\right}(k_i)・・・・・・(22)

となります。これで、ジャクソン・ネットワークが積形式解を持つことが証明できました。