ケリーネットワークの積形式解の存在証明の試み(失敗)
「ケリーネットワークへの助走」の続きです。
ケリーネットワークが積形式解を持つことの証明は、「ジャクソンネットワークの積形式解の存在(1)」「ジャクソンネットワークの積形式解の存在(2)」「ジャクソンネットワークの積形式解の存在(3)」で展開した証明をほぼなぞることで証明出来るのではないかと、「眼が覚めて眠れない」でひらめきました。
ところが、これを試してみたのですがうまくいきませんでした。以下は、その「失敗した」試みです。
待ち行列ネットワークのステーションの数をとします。ステーションを区別するために1から順番に番号をつけていきます。番目のステーションは台の装置から成り、装置の処理時間は指数分布であるとします。ジョブのクラスの数をとします。クラスに1から順番に番号をつけていきます。外から各ステーションへの各クラスのジョブの到着の時刻の間隔も指数分布であるとします。
番目のステーションを通るクラスのジョブのスループットをで表します。また、番目のステーションに外から入ってくるクラスのジョブのスループットをで表します。ステーションを終えたクラスのジョブがクラスになってステーションに進む確率をで表します。そうすると、ステーションにクラスのジョブの入ってくる量は
- ・・・・・・(1)
で表すことが出来ます。式(1)はについての連立一次方程式になっています。
これがについて解けると仮定します。これを、
- ・・・・・・(2)
と表わすことにします。ただしはを簡略的に表わしたものであり、はを簡略的に表わしたものとします。さてを任意の定数として、式(1)で
- →
- →
で置き換えると、やはり式(1)が成り立つので式(2)について
- ・・・・・・(3)
が成り立つことが分かります。一方、定義から
- ・・・・・・(4)
です。式(4)を変形して
- ・・・・・・(5)
となります。さらに
- ・・・・・・(6)
とおけば
- ・・・・・・(7)
ネットワークの「状態」を各ステーションで待っている、あるいは処理中である各々のクラスのジョブの数の組[tex:*1]で表すことにします。そして、状態について以下のような局所平衡方程式が成立すると仮定します。
-
- ・・・・・・(8)
さあ、ここで詰まってしまいました。
状態ではステーションのクラスのジョブはいったいいくつ処理中でしょう?
ステーションの装置台数はです。処理中であるクラスのジョブ数は、可能性としては0からまであります。0というのはつまり、台の装置が全て他のクラスのジョブを処理している場合のことを指しています。
ですから式(8)の左辺、これは、ステーションからクラスのジョブがの間に終了する確率を表したつもりだったのですが、かならずしも
に等しくないことが分かります。よって式(8)は正しくありません。式(8)が成り立たないならば、ここから先へ話が進みません。ここで立ち往生です。
「複数クラスを持つM/M/1待ち行列(1)」に続きます。