複数クラスを持つM/M/m待ち行列(4)
「複数クラスを持つM/M/m待ち行列(3)」の続きです。
- ではどのように状態を定義すればよいのでしょうか?
これは前回の、状態を
- 、、、
- 、、
に分解したことを考えれば分かります。この場合装置4台のうち3台が処理中ですが、空いている1台がどの位置にあるかを気にしてはいません。よって、状態の定義は以下のようになります。
- ジョブが現実にどの装置上にあるかにかかわらず、図の上では装置#1から順に詰めていくものとする。
- ただしクラスを1から順にソートすることはしない。
なお、このように書いた状態で、処理中のどれかのジョブが終了して出て行った場合は、そのジョブの位置より右側の全てのジョブが1つずつズレるものとします。たとえば
でクラス1のジョブが終了したとすれば、終了後の状態は
となるとします。
次に問題になるのは、上のように定義した状態に対してどのような平衡方程式を与えるか、です。その前に前の定義(「複数クラスを持つM/M/2待ち行列(2)」)で行った状態と今回の定義で行った状態を記法の上で区別することについて述べます。前の定義の状態の場合は処理中のジョブについて丸カッコを用います。今回の定義の状態の場合は処理中のジョブについて角カッコを用います。たとえば、状態は、以下の6つの状態の和です。
- 、、、、、
この点をはっきりさせた上で平衡方程式の形を検討します。そのために状態について今までどのような平衡方程式を立ててきたかを考えます。状態の平衡方程式は以下のようなものでした。
これを今回の新しい状態定義で考え直すと下図のようになります。(図ではジョブは右から順に詰めていくように書いています。)
この図から、たとえば一番上の状態については
- ・・・・・(39)
他の状態についても同様に平衡方程式を立てると、図1が成り立つことが分かります。もちろん、図1から式(39)は導出出来ません。しかし式(39)などから図1が成り立つことは言えます。つまり式(39)などは図1の充分条件ではあるが必要条件ではないということです。式(39)を仮定して計算し、うまくいかなければ別に考える、というのがここでの態度です。さて、式(39)を一般化すれば
- ・・・・・(40)
となります。ここで注意すべきなのは、式(40)では、、という条件をつけなくてもよいということです。たとえば状態についての平衡方程式は以前の考察から
ですが、これを新しい状態に分解すると下図のようになります。
この場合も式(40)が成り立てば図2が成り立ちます。
さて式(40)を、処理中の装置が1台の場合、2台の場合、4台の場合について拡張すると
- ・・・・・(42)
と表すことが出来ます。ただし、状態は状態にクラスのジョブが到着して出来た状態を表わします。または処理中のジョブの数です。さらに、このステーションにジョブが5個以上ある(すなわち待っているジョブが1個以上ある場合について考えても、式(42)が成り立つことが分かります。ただしが4より大きくならないことに注意します。
今までは装置が4台のステーションについて考えてきましたが式(42)は、台の装置の場合にも容易に拡張出来ます。すなわち式(42)の形はそのままでがより大きくはならない、と考えればよいわけです。以下は一般のM/M/mについて考察していきます。式(42)を変形して
- ・・・・・(42)
一方、「[複数クラスを持つM/M/m待ち行列(1)]」の式(2)
- ・・・・・(2)
を装置台の場合に拡張して
- ・・・・・(43)
式(43)を式(42)に代入して
- ・・・・・(44)
ここから各状態の定常状態確率を求めることが出来ます。
「複数クラスを持つM/M/m待ち行列(5)」に続きます。