M/D/1の定常状態分布の近似式
「M/D/1の定常状態分布の求め方(2)」で導出した、M/D/1の定常状態分布を求める式
- ・・・・・(1)
- ・・・・・(8)
- の時
- ・・・・・(28)
- ただし
- ・・・・・(4)
は、実際の計算が大変です。そこで、精度はある程度犠牲にして簡便に求める方法がないか調べてみます。「M/D/1の定常状態分布」で示したグラフを見ると、との間の比は特別扱いしなければならないが、の時のはほぼ一定ではないか、という気がしてきます。一例として利用率が80%、すなわち、のときのグラフを再掲します。
実際に、の時のをいろいろなの値の場合で調べて見ると以下のグラフのようになります。
このグラフからが大きいほど、は一定値に近づくことが分かります。(が0.4以下の時にグラフの線がまで続いていないのはもも非常に小さな数になったためにExcelでの計算に誤差が大きく出て計算出来なかったことを表しています。)
そこで、
- ・・・・・(29)
- ただしは定数
と仮定して、全確率の定理
- ・・・・・(30)
と、M/D/1の平均待ち時間が
- ・・・・・(31)
- (「M/D/1における待ち時間の式の導出」参照)
を満たすようなを求めることにします。ただし、式(29)はには成り立たないとします。それは、はジョブがシステムにまったくない状態の確率を表していますから式(1)が成り立つのは確実です。もし、式(29)がの時にも成り立つとすると式(1)(29)(30)からM/M/1とまったく同じが導き出されます(「M/M/1における待ち時間の式の導出(2)」の式(9)参照)。すると
- ・・・・・(31’)
が導き出され(「M/M/1における待ち時間の式の導出(2)」の式(15)参照)式(31)と矛盾する結果になってしまうからです。
では
- ・・・・・(29)
- ただし
- は定数
- ただし
として、式(30)(31)を満たすような定数を求めることにします。まず、式(29)からの時
- ・・・・・(32)
が導かれます。
次に、式(30)ですが、式(1)を考慮すれば、以下のように変形できます。
- ・・・・・(33)
式(33)に(32)を代入して
- ・・・・・(34)
次に、式(31)ですが、まずはリトルの法則を用いて平均待ちジョブ数を求める式に変形します。この場合、WIPが、サイクルタイムが、スループットが
- ・・・・・(35)
にあたるので
式(34)を用いれば
よって
- ・・・・・(36)
一方、の定義から
- ・・・・・(37)
なので、式(36)を考慮すると
となります。ここで式(33)を考慮すると
- ・・・・・(38)
式(38)の左辺は
となりますが、「補足」の式(2)を参照すれば
ここで式(34)を考慮すれば
これを式(38)の左辺に代入すれば
よって
- ・・・・・(39)
よっての時のM/D/1の定常分布の近似式は以下のようになります。
まとめると、M/D/1の定常分布の近似式は
- ・・・・・(1)
- の時
- ・・・・・(40)
となります。
「M/D/1の定常状態分布の近似式の精度」に続きます。