M/D/1の定常状態分布の近似式の精度

M/D/1の定常状態分布の近似式」で提案した式

  • p(0)=1-u・・・・・(1)
  • k{\ge}1の時
    • p(k){\approx}2(1-u)\left(\frac{u}{2-u}\right)^k・・・・・(40)

の精度を調べてみます。そのために上の式を、「M/D/1の定常状態分布の求め方(2)」で示した厳密な計算方法

  • p(0)=1-u・・・・・(1)
  • p(1)=\frac{[1-A(0)]p(0)}{A(0)}・・・・・(8)
  • k{\ge}1の時
    • p(k+1)=\frac{p(k)-\Bigsum_{i=0}^{k-1}A(i+1)p(k-i)-A(k)p(0)}{A(0)}・・・・・(28)
  • ただし
    • A(k)=\frac{u^k}{k!}\exp(-u)・・・・・(4)

で計算した結果と比較します。比較結果を下のグラフに示します。


このグラフから分かるように近似式の精度は±2.5%以内に入っていることが分かります。しかも誤差の大きなものはp(1)p(2)に限るので、それらを除けば、精度は±1%以内に入っています。そこで、もう少しp(1)p(2)の精度を改善する方法を考えます。


p(1)p(2)の誤差と利用率の関係をグラフにすると

となります。これを補正することをこれから検討するわけですが、

  • \Bigsum_{k=0}^{\infty}p(k)=1

は常に成り立たなければなりませんから、p(1)を補正で減らした分だけp(2)を増やす必要があります。そこで、

  • p(1)の誤差−p(2)の誤差)/2

を計算します。すると下のグラフの黄色の線のようになります。

そして、これを折れ線

  • u{\le}0.8の時
    • y(u)=\frac{0.017}{0.8}u・・・・・(41)
  • u>0.8の時
    • y(u)=\frac{0.017}{0.2}(1-u)・・・・・(42)

で近似します。グラフに示すと以下のようになります。


そこで式(40)で求めたp(1)の近似値から式(41)または(42)のyを引いた値を新しい近似値とし、また、式(40)で求めたp(2)の近似値から式(41)または(42)のyを足した値を新しい近似値として、厳密な計算結果との差をとると、下のグラフの「p(1)補正」「p(2)補正」のようになり

誤差は±1%以内に入ります。



以上の結果、より精度の高い近似式は以下のようになります。

  • p(0)=1-u・・・・・(1)
  • p(1){\approx}2(1-u)\left(\frac{u}{2-u}\right)-y(u)・・・・・(43)
  • p(2){\approx}2(1-u)\left(\frac{u}{2-u}\right)^2+y(u)・・・・・(44)
    • ただし
    • u{\le}0.8の時
      • y(u)=\frac{0.017}{0.8}u・・・・・(41)
    • u>0.8の時
      • y(u)=\frac{0.017}{0.2}(1-u)・・・・・(42)
  • k{\ge}3の時
    • p(k){\approx}2(1-u)\left(\frac{u}{2-u}\right)^k・・・・・(40)

この近似式の結果と厳密な計算の結果の差を下のグラフに示します。

上の近似式の精度が±1%であることが分かります。しかし、上の式はちょっと表現が面倒なので、精度±3%でかまわない場合はp(1)p(2)についても式(40)を使えばよいでしょう。