E2/M/1待ち行列の到着時刻状態分布(2)

E2/M/1待ち行列の到着時刻状態分布(1)」の続きです。
あるジョブ到着直前にシステムにジョブj個あったとします。その次のジョブ到着直前にk個になる確率をC(j,k)で表すことにします。この間隔の間にジョブは1個到着しますが、処理完了するジョブは最大、全部終了する可能性があります。よってジョブが2個以上増える確率はゼロです。よって

  • C(j,k)=0  ただしk{\ge}j+2・・・・・(9)

さらに、2番目の到着直前にジョブが1個以上残っている確率は式(8)を用いて

  • C(j,k)=B(j+1-k) ただし1{\le}k{\le}j+1・・・・・(10)

2番目の到着直前にジョブが0個残っている確率には(10)は適用出来ません。というのは元々j個しかないので、(到着したジョブも含めて)j+1個より多くのジョブが処理完了することはないからです。最初の到着の直前にj個だった場合に、次の到着直前でのジョブ数の全ての可能性の確率を足せば1になるはずですから、

  • \Bigsum_{k=0}^{j+1}C(j,k)=1

よって

  • C(j,0)=1-\Bigsum_{k=1}^{j+1}C(j,k)

ここで(10)を用いれば

  • C(j,0)=1-\Bigsum_{k=1}^{j+1}B(j+1-k)=1-\Bigsum_{m=0}^jB(m)

よって

  • C(j,0)=1-\Bigsum_{m=0}^jB(m)・・・・・(11)

ところで最初の到着直前にシステム内のジョブ数がjである確率をp(j)とすれば、次の到着直前でジョブ数がkである確率は

  • \Bigsum_{j=0}^{\infty}C(j,k)p(j)

で表されます。定常状態では、この確率はp(k)に等しいはずですから

  • p(k)=\Bigsum_{j=0}^{\infty}C(j,k)p(j)

になります。これが平衡方程式になります。これを(9)(10)(11)を考慮すると
k{\ge}1の時

  • p(k)=\Bigsum_{j=0}^{\infty}B(j+1-k)p(j)=\Bigsum_{j=k-1}^{\infty}B(j+1-k)p(j)=\Bigsum_{j=k}^{\infty}B(j-k)p(j-1)

よって

  • p(k)=\Bigsum_{j=k}^{\infty}B(j-k)p(j-1)  ただしk{\ge}1・・・・・(12)

k=0の時

  • p(0)=\Bigsum_{j=0}^{\infty}C(j,0)p(j)・・・・・(13)

ただしC(j,0)は(11)で与えられる、となります。
さらに全確率の定理から

  • \Bigsum_{k=0}^{\infty}p(k)=1・・・・・(14)

これら(12)(13)(14)を解くことによってp(k)を求めることになります。
これらの式は、「D/M/1待ち行列の到着時刻状態分布(2)」の式(8)(9)(10)(7)とまったく同じです。違うのは、B(j)の具体的な値だけです。よって「D/M/1待ち行列の到着時刻状態分布(2)」の式(14)と同じように

  • p(k)=(1-b)b^k・・・・・(15)

に置くことが出来ます。式(12)でk=1を代入して

  • p(1)=\Bigsum_{j=1}^{\infty}B(j-1)p(j-1)・・・・・(16)

式(16)に式(15)を代入して

  • b(1-b)=\Bigsum_{j=1}^{\infty}B(j-1)b^{j-1}(1-b)

よって

  • b=\Bigsum_{j=1}^{\infty}B(j-1)b^{j-1}
  • b=\Bigsum_{j=0}^{\infty}B(j)b^j

よって「E2/M/1待ち行列の到着時刻状態分布(1)」の式(8)を代入して

  • \Bigsum_{j=0}^{\infty}\frac{4(j+1)u^2}{(1+2u)^{j+2}}b^j=b・・・・・(17)

補足」の式(1)から

  • \Bigsum_{j=0}^{\infty}r^j=\frac{1}{1-r}・・・・(18)

同じく「補足」の式(2)から

  • \Bigsum_{j=1}^{\infty}jr^{j-1}=\frac{1}{(1-r)^2}・・・・(19)

(17)と(19)から

  • \Bigsum_{j=0}^{\infty}(j+1)r^j=\Bigsum_{j=0}^{\infty}jr^j+\Bigsum_{j=0}^{\infty}r^j=\frac{r}{(1-r)^2}+\frac{1}{1-r}=\frac{r+1-r}{(1-r)^2}=\frac{1}{(1-r)^2}

ここで

  • r=\frac{b}{1+2u}・・・・・(20)

を代入すると

  • \Bigsum_{j=0}^{\infty}(j+1)\left(\frac{b}{1+2u}\right)^j=\frac{1}{\left(1-\frac{b}{1+2u}\right)^2}

よって

  • \Bigsum_{j=0}^{\infty}(j+1)\left(\frac{b}{1+2u}\right)^j=\frac{(1+2u)^2}{(1+2u-b)^2}

この両辺に

  • \frac{4u^2}{(1+2u)^2}

をかけると

  • \Bigsum_{j=0}^{\infty}\frac{4(j+1)u^2}{(1+2u)^{j+2}}b^j=\frac{4u^2}{(1+2u)^2}\frac{(1+2u)^2}{(1+2u-b)^2}=\frac{4u^2}{(1+2u-b)^2}

この式と式(17)から

  • \frac{4u^2}{(1+2u-b)^2}=b・・・・・(21)

bの値は(21)を解いて求めることになります。そうして求まったbを(15)に代入してp(k)を求めることが出来ます。


E2/M/1待ち行列の平均待ち時間とその近似式」に続きます。