Kingmanの近似式の導出メモ(2)
「Kingmanの近似式の導出メモ(1)」の続きです。
前記の擬似が本物のと異なっているのは、印のついているジョブの処理時間とその直後にある、印のついていないジョブの処理時間が連続していない場合が存在する、という点でした。つまり本当のでは連続していなければならない(平均の)ジョブの処理時間が分離した2つの処理時間になってしまうことがある、ということです。
しかし、擬似において、印のついていないジョブの処理時間がその前のジョブの処理時間と連続していなくても、その印のついていないジョブの処理開始から処理終了までに別のジョブが到着して待つようなことがなければ、この処理時間は他のジョブの待ち時間に影響を与えません。よって、擬似において都合が悪い状況というのは、印のついていないジョブが到着した時に、待ちなしで処理が開始され(もし待ちがあれば、1つ前のジョブと処理が連続するはずです)、その処理中に他のジョブが到着するという場合です。が大きければ、ジョブが待ちなしで処理が開始される確率は小さくなるので、この不都合な状況の発生確率も小さくなるはずです。逆にが小さくなれば、処理中に別のジョブが到着する確率が小さくなるので、この場合も不都合な状況の発生確率も小さくなるはずです。ということは、どのようなの値であっても不都合な状況の発生確率は低い、という期待を持つことが出来ます。このあたりをもう少し調べてみましょう。
あるジョブが到着した時に待ちがないという確率は、この待ち行列がもともとM/M/1なので、PASTAを適用することが出来、答えはになります。次に、処理中に次のジョブが到着する確率は、処理中に次のジョブがまったく到着しない確率を求めることによって求めることにします。ジョブの到着間隔は
- ・・・・・(11)
です。よって時間の間にジョブがまったく到着しない確率は「ポアソン分布」の式(1)で
とおいて
よって、の間に次のジョブが到着する確率は
- ・・・・・(12)
となります。ジョブの処理時間がになる確率密度は、平均処理時間がであることに注意して、指数分布の確率密度の式を適用すれば
- ・・・・・(13)
となります。よっての平均は
よって
- ・・・・・(14)
となります。これが処理中に次のジョブが到着する確率になります。不都合な状況が起る確率は、印のついていないジョブが待ちなしで処理を開始し、「かつ」、その処理中に次のジョブが到着する確率は
- ・・・・・(15)
となります。これをグラフ化すると以下のようになります。
このクラフからは最大でも17%にしか過ぎないことが分かります。そして、もし、この状況が起きたとしてもそれによるジョブの待ち時間の増加は大きく見積っても1ジョブ分、つまりなので、の誤差は1/2の17%で0.085ということになります。おそらくはもっと小さいでしょう。よって、「Kingmanの近似式の導出メモ(1)」の式(8)
- ・・・・・(8)
という近似は充分成り立つと考えることが出来ます。
「Kingmanの近似式の導出メモ(3)」に続きます。