Kingmanの近似式の導出メモ(3)

Kingmanの近似式の導出メモ(2)」の続きです。
M/M/1待ち行列から擬似的にE_2/E_2/1待ち行列を導き出したのと同じ手順を、M/D/1やD/M/1に適用することが出来ます。M/D/1で到着するジョブを1つ置きに印をつけ、印をつけたジョブだけに注目し、処理時間としては印をつけたジョブの処理時間と、その一つあとのジョブの処理時間を足したものを自分の処理時間と見なせば、擬似的なE_2/D/1待ち行列が出来ます。D/M/1について同様の手順を適用するとD/E_2/1待ち行列が出来ます。「Kingmanの近似式の導出メモ(1)」で行った考察と同様の考察によって、

  • CT_{q,E2/D/1}(u,t_e){\approx}\frac{1}{2}CT_{q,M/D/1}(u,t_e)・・・・・(16)
  • CT_{q,D/E2/1}(u,t_e){\approx}\frac{1}{2}CT_{q,D/M/1}(u,t_e)・・・・・(17)

を導くことが出来ます。この時、「Kingmanの近似式の導出メモ(2)」で述べた「不都合な状況が起る確率」は、「Kingmanの近似式の導出メモ(2)」の式(15)と同じ式で表されるわけではありませんが、そこで述べたように

印のついていないジョブが到着した時に、待ちなしで処理が開始され(もし待ちがあれば、1つ前のジョブと処理が連続するはずです)、その処理中に他のジョブが到着するという場合です。uが大きければ、ジョブが待ちなしで処理が開始される確率は小さくなるので、この不都合な状況の発生確率も小さくなるはずです。逆にuが小さくなれば、処理中に別のジョブが到着する確率が小さくなるので、この場合も不都合な状況の発生確率も小さくなるはずです。

ということから、小さいものと予想されます。よって、式(16)(17)が近似として成り立つことが予想されます。


Kingmanの近似式の導出メモ(1)」の式(2)

  • CT_{q,D/M/1}(u,t_e){\approx}\frac{u}{2(1-u)}t_e・・・・・(2)

から式(16)は

  • CT_{q,E2/D/1}(u,t_e){\approx}\frac{1/2}{2}\frac{u}{1-u}t_e・・・・・(18)

と書くことが出来、「Kingmanの近似式の導出メモ(1)」の式(5)

  • CT_q=\frac{1+c_e^2}{2}\frac{u}{1-u}t_e・・・・・(5)

から

  • CT_{q,M/D/1}(u,t_e)=\frac{u}{2(1-u)}t_e・・・・・(19)

を導くことが出来るので、式(17)は

  • CT_{q,E2/D/1}(u,t_e){\approx}\frac{1/2}{2}\frac{u}{1-u}t_e・・・・・(20)

と書くことが出来ます。
E2/D/1ではc_a^2=1/2c_e=0であること、と、D/E2/1ではc_a^2=0c_e=1/2であること、を考慮すれば、式(18)と(20)もKingmanの近似式

  • CT_q{\approx}\frac{c_a^2+c_e^2}{2}\frac{u}{1-u}t_e・・・・・(6)

を支持する結果であることが分かります。


さて、以上でKingmanの近似式(6)は、M/G/1、GI/M/1、E_2/E_2/1E_2/D/1D/E_2/1によって支持されます。


さらに(6)を支持する証拠として重負荷近似があります。これはGI/G/mについて

  • \lim_{u{\rightar}1}(1-u)CT_{q,GI/G/m}=\frac{c_a^2+c_e^2}{2m}t_e・・・・・(7)

となる、というものです。(これの証明の理解を近々トライしたいと思っています。) GI/G/1であれば、(7)は

  • \lim_{u{\rightar}1}(1-u)CT_{q,GI/G/1}=\frac{c_a^2+c_e^2}{2}t_e・・・・・(8)

になります。式(6)が式(8)を満足するのは明らかです。