Tさんとのやりとり(1)
このところ、生産システムのコンサルタントをされているある方と、私のブログの内容のことでメールでやりとりさせてもらっています。この方の御了解を得て、そのやりとりを一部、ご紹介しようと思います。ネットに載せることで何か起こるかどうか、ちょっと見てみたいと私は思ったのでした。この方を仮にTさんと記すことにします。
Tさんから
12/15の「ケリーネットワークでのサイクルタイム」ですがこれによると半導体前工程のようにループしたフローでのサイクルタイムは到着時間変動と処理時間変動に影響を受けないことになりますが、ループされたフローでは変動項は意味がないと言うことでしょうか?
私の感覚としてはループフローへのIN、OUTの変動を含めて変動はサイクルタイムの影響要因になっていると思っています。
私から
私の感覚としてはループフローへのIN、OUTの変動を含めて変動はサイクルタイムの影響要因になっていると思っています。
はい、それが正しいと思います。
おそらく12/15のエントリーの「確率的経路選択であろうと確定的経路選択であろうと各ステーションでのサイクルタイムは等しい 」を読まれて、そのような印象をもたれたのではないかと思います。ここで述べているのは、次工程が決まっているか(確定的)、その場でサイコロを振って決めるか(確率的)、に関わらず、(ただし、流入量の平均は両者で等しいとします)、各ステーションでのサイクルタイムは等しい、ということです。プロセスフローをそのまま用いてモデル化するのでなく、装置群A→装置群B、の総流量で計算しても同じ結果になる、ということです。
ただし、これは実用上はあまり役に立ちません。というのはジャクソンネットワークもケリーネットワークも、装置処理時間の分布は指数分布である、という前提を持っているからです。ここが現実とはかけ離れているところです。
より現実的な解析をするには、Word Whittが開発したQNA(Queueing Network Analysis)を用いるのがよいみたいです。(2008/8/4から2008/10/15までに解説を書きました)。このあたり、難しくて私の理解がまだよく出来ていません。
Tさんから
より現実的な解析をするには、Word Whittが開発したQNA(Queueing Network Analysis)を用いるのがよいみたいです。(2008/8/4から2008/10/15までに解説を書きました)。このあたり、難しくて私の理解がまだよく出来ていません。
了解しました。やはりループしているネットワーク(ライン)においても待ち時間は変動項の影響を受けていると言うことですね。
2008/8/4から2008/10/15のエントリーを読ませていただいて分かったことは
- もう少し厳密に解析するには2008年9月15日エントリーQNA読解:4.3 重ね合わせ(1)のWhittが精度が悪くなるが採用した式(採番されていないがたぶん33式)と34,35式で求めれば良い。
- そして、製品のサイクルタイム(ネットワークの総待ち時間平均)は2008年10月15日エントリーQNA読解:6.3.1 クラスとルート毎のインプットの (ア)式 全ての工程の待ち時間と処理時間の合計として良い。
- 総待ち時間の変動は (イ)式 全ての工程の待ち時間の変動と処理時間の変動の合計として良い。
上記の考えで間違えないでしょうか?
私から
よく読んで下さってありがとうございます。感激です。式(33)の採番忘れのご指摘ありがとうございます。修正致しました。
- そして、製品のサイクルタイム(ネットワークの総待ち時間平均)は2008年10月15日エントリー QNA読解:6.3.1 クラスとルート毎のインプットの (ア)式 全ての工程の待ち時間と処理時間の合計として良い。
- 総待ち時間の変動は (イ)式 全ての工程の待ち時間の変動と処理時間の変動の合計として良い。
ここの部分はこの理解で正しいです。
もう少し厳密に解析するには
- 2008年9月15日エントリー QNA読解:4.3 重ね合わせ(1)のWhittが精度が悪くなるが採用した式(採番されていないがたぶん33式)と34,35式で求めれば良い。
ここの部分は34式の代わりに、2008年9月16日エントリー「QNA読解:4.3 重ね合わせ(2)」の(ウ)式をお使い下さい。こちらがWhitt教授推奨の式です。このエントリーのうしろのほうの記述「ともかくこれで重ね合わせのための一連の式が揃いました。それをまとめて記すと」のところをご参照下さい。
まだこのあとずっと続くのですが、今日のところはここまで。