QNAによるライン・サイクルタイムの計算例(5)

QNAによるライン・サイクルタイムの計算例(4)」の続きです。今度は下図のようなラインを考えます。

このラインを流れる品種は品種1、品種2の2種類で、品種1はステーション2→1(緑の矢印)、品種2はステーション2→3(黄色の矢印)のラウティングを持つとします。品種1のラインへの到着時間間隔は平均t_a(1)標準偏差\sigma_a(1)とし、品種2のそれらは平均t_a(2)標準偏差\sigma_a(2)とします。ステーション1は装置1台からなり、ステーション2は3台、ステーション3は2台からなります。品種1に必要な処理時間は、ステーション2では平均t_e(2,1)標準偏差\sigma_e(2,1)、ステーション1では平均t_e(1,1)標準偏差\sigma_e(1,1)とします。品種2に必要な処理時間は、ステーション2では平均t_e(2,2)標準偏差\sigma_e(2,2)、ステーション3では平均t_e(3,2)標準偏差\sigma_e(3,2)とします。これらのデータから品種1と2のそれぞれのジョブのこのラインでのサイクルタイムCT(1)CT(2)を計算して行きます。


まずは各ステーション利用率uです。ステーション2については「QNAによるライン・サイクルタイムの計算例(3)」でのステーション3と同じように考えていきます。品種1、2の流量をそれぞれ\lambda_0(1)\lambda_0(2)で表すと、それらは平均到着時間間隔の逆数ですから

  • \lambda_0(1)=\frac{1}{t_a(1)}・・・・・(1)
  • \lambda_0(2)=\frac{1}{t_a(2)}・・・・・(2)

となります。この流量で重み付けしてt_e(2,1)t_e(2,2)の平均をとれば、ステーション2の平均処理時間を求めることが出来ます。これをt_e(2)で表すことにします。すると

  • t_e(2)=\frac{\lambda_0(1)t_e(2,1)+\lambda_0(2)t_e(2,2)}{\lambda_0(1)+\lambda_0(2)}・・・・・(3)

となります。ステーション2に到着する流量\lambda

  • \lambda=\lambda_0(1)+\lambda_0(2)・・・・・(4)

ですから、ステーション2への平均到着間隔t_aは、その逆数の

  • t_a=\frac{1}{\lambda_0(1)+\lambda_0(2)}・・・・・(5)

よってu(2)

  • u(2)=\frac{t_e(2)}{t_a}=\frac{\lambda_0(1)t_e(2,1)+\lambda_0(2)t_e(2,2)}{\lambda_0(1)+\lambda_0(2)}(\lambda_0(1)+\lambda_0(2))
    • =\lambda_0(1)t_e(2,1)+\lambda_0(2)t_e(2,2)=\frac{t_e(2,1)}{t_a(1)}+\frac{t_e(2,2)}{t_a(2)}

よって

  • u(2)=\frac{t_e(2,1)}{t_a(1)}+\frac{t_e(2,2)}{t_a(2)}・・・・・(6)

です。
ステーション1、3については簡単に

  • u(1)=\frac{t_e(1,1)}{t_a(1)}・・・・・(7)
  • u(3)=\frac{t_e(3,2)}{t_a(2)}・・・・・(8)

となります。


次に各ステーションでの処理時間の変動係数を求めます。
ステーション2の場合は、まずステーション2全体での標準偏差\sigma_e(2)を求める必要があります。「QNAによるライン・サイクルタイムの計算例(3)」のステーション3と同様に考えて、品種1、2それぞれについて処理時間の2乗平均を算出し、それを加重平均することでステーション2全体の処理時間の2乗平均を算出し、そこからステーション2全体での標準偏差\sigma_e(2)を算出します。ステーション2での品種1のための処理時間だけの2乗平均E(B(2,1)^2)、品種2のための処理時間だけの2乗平均E(B(2,2)^2)を以下のようにして求めます。

  • E(B(2,1)^2)=t_e(2,1)^2+\sigma_e(2,1)^2・・・・・(9)
  • E(B(2,2)^2)=t_e(2,2)^2+\sigma_e(2,2)^2・・・・・(10)

よって、ステーション2全体での処理時間の2乗平均E(B(2)^2)

  • E(B(2)^2)=\frac{\lambda_0(1)E(B(2,1)^2)+\lambda_0(2)E(B(2,2)^2)}{\lambda_0(1)+\lambda_0(2)}・・・・・(11)

こうして求めたE(B(2)^2)と、式(3)で求めたt_e(2)を用いて、

  • \sigma_e(2)^2=E(B(2)^2)-t_e(2)^2

よって

  • \sigma_e(2)=\sqrt{E(B(2)^2)-t_e(2)^2}・・・・・(12)

を求めることが出来ます。\sigma_e(2)が求まったならば

  • c_e(2)=\frac{\sigma_e(2)}{t_e(2)}・・・・・(13)

でステーション2の処理時間の変動係数を求めることが出来ます。
ステーション1、3については簡単に

  • c_e(1)=\frac{\sigma_e(1,1)}{t_e(1,1)}・・・・・(14)
  • c_e(3)=\frac{\sigma_e(3,2)}{t_e(3,2)}・・・・・(15)

となります。


QNAによるライン・サイクルタイムの計算例(6)」に続きます。