QNAによるライン・サイクルタイムの計算例(7)

QNAによるライン・サイクルタイムの計算例(6)」の続きです。
今度は、ラインを流れる品種は1品種だけですが、ループのラウティングを持つ下図のようなラインを考えます。

この品種はステーション1→2→1というラウティングを持っています。ジョブのラインへの到着時間間隔は平均t_a標準偏差\sigma_aとします。ステーション1は装置1台からなり、ステーション2は3台からなります。処理時間は、ステーション1での最初の工程では平均t_e(1,1)標準偏差\sigma_e(1,1)、ステーション1での2回目の工程ではは平均t_e(1,2)標準偏差\sigma_e(1,2)、ステーション2では平均t_e(2)標準偏差\sigma_e(2)とします。これらのデータからジョブのこのラインでのサイクルタイムCTを計算するのがここでの目標です。


まずは各ステーション利用率uです。
ステーション1へは、ラインの外からとステーション2からの両方の流れが到着します。ラインの外から到着する流量を\lambda_0で表すと、それらは平均到着時間間隔の逆数ですから

  • \lambda_0=\frac{1}{t_a}・・・・・(1)

となります。さらに、ステーション2から来る流れの流量もそれに等しいですから、ステーション1に到着する全体の流量\lambda(1)

  • \lambda(1)=2\lambda_0=\frac{2}{t_a}・・・・・(2)

よって全体の流量で見たステーション1への平均到着時間間隔t_a(1)は、この逆数の

  • t_a(1)=\frac{1}{\lambda(1)}=\frac{t_a}{2}・・・・・(3)

となります。次にステーション1全体での平均処理時間t_e(1)は、外部からの流量とステーション2からの流量が等しいので明らかに

  • t_e(1)=\frac{t_e(1,1)+t_e(1,2)}{2}・・・・・(4)

です。よって、ステーション1の利用率u(1)

  • u(1)=\frac{t_e(1)}{t_a(1)}=\frac{t_e(1,1)+t_e(1,2)}{t_a}・・・・・(5)

となります。
次にステーション2の利用率u(2)は簡単に

  • u(2)=\frac{t_e(2)}{t_a}・・・・・(6)

となります。


次に各ステーションでの処理時間の変動係数を求めます。
ステーション1の場合は、まずステーション1全体での標準偏差\sigma_e(1)を求める必要があります。「QNAによるライン・サイクルタイムの計算例(3)」のステーション3と同様に考えて、1回目の工程、2回目の工程それぞれについて処理時間の2乗平均を算出し、それを加重平均(この場合は流量が等しいので普通の平均になる)を計算することでステーション1全体の処理時間の2乗平均を算出し、そこからステーション1全体での標準偏差\sigma_e(1)を算出します。1回目の工程の処理時間の2乗平均E(B(1,1)^2)、2回目の工程の処理時間の2乗平均E(B(1,2)^2)を以下のようにして求めます。

  • E(B(1,1)^2)=t_e(1,1)^2+\sigma_e(1,1)^2・・・・・(7)
  • E(B(1,2)^2)=t_e(1,2)^2+\sigma_e(1,2)^2・・・・・(8)

よって、ステーション1全体での処理時間の2乗平均E(B(1)^2)

  • E(B(1)^2)=\frac{E(B(1,1)^2)+E(B(1,2)^2)}{2}・・・・・(9)

こうして求めたE(B(1)^2)と、式(4)で求めたt_e(1)を用いて、

  • \sigma_e(1)^2=E(B(1)^2)-t_e(1)^2

よって

  • \sigma_e(1)=\sqrt{E(B(1)^2)-t_e(1)^2}・・・・・(10)

を求めることが出来ます。\sigma_e(1)が求まったならば

  • c_e(1)=\frac{\sigma(1)}{t_e(1)}・・・・・(11)

でステーション1の処理時間の変動係数を求めることが出来ます。
ステーション2については簡単に

  • c_e(2)=\frac{\sigma(2)}{t_e(2)}・・・・・(12)

となります。


QNAによるライン・サイクルタイムの計算例(8)に続きます。