拡散近似(6)
のブラウン運動でした。しかし、私たちが近似したい待ち行列の客数の変化の仕方(過程)は、「拡散近似(3)」で示したように、平均
- ・・・・・(21)
分散(=標準偏差の2乗)
- ・・・・・(22)
を持つ過程でした。「拡散近似(5)」で得たブラウン運動の縦軸()の原点を変えることでゼロでない平均のブラウン運動を得ることは出来ます。しかし(21)に示された平均は時間の経過とともに線形に減っていく平均でした。これに対して「拡散近似(5)」で得たブラウン運動は時間が経過しても平均が変化しないブラウン運動です。時間の経過とともに平均が線形に減っていくブラウン運動を得るためには、の代わりに、
とを用いればよいでしょう。このようにして得たブラウン運動の平均はになるはずです。
分かりやすくするために、古い座標を、新しい座標をで表し
- ・・・・・(42)
- ・・・・・(43)
と置きます。すると
だったものが
に変換されます。(軸はであるような直線ですから(42)から直線になることに注意しましょう。)
では、このブラウン運動が満たす微分方程式を求めていきます。「拡散近似(5)」の式
- ・・・・・(40)
を変数とで表すことにします。
- ・・・・・(44)
とおきます。(42)(43)を念頭におけば
- ・・・・・(45)
次に
- ・・・・・(46)
(46)から
- ・・・・・(47)
(45)と(47)を(40)に代入すれば、
ここで改めてを、を、をに変数名を変えると
- ・・・・・(48)
これが、平均
- ・・・・・(49)
- ・・・・・(50)
驚くことに、微分方程式(48)には定常解、つまり時間の経過で変化しない解が存在します。時間の経過で変化しませんから
になります。よって(48)は
となります。もはやは時間に依存しないのですから、ここからは単にと記述することにします。そして偏微分記号は全微分記号に直します。すると
- ・・・・・(51)
これを積分して
- (は積分定数)
よって
- (は積分定数)
- ・・・・・(52)
ここで、がそもそも確率密度であったことと、であったことを思い出します。すると
でなければなりません。(52)から
まずここで定数項が0以外であると左辺の積分がかになってしまい、1にならないことに気づきます。よってです。よって
さらには負であることに気をつければ
よって
よって
- ・・・・・(53)
を得ることが出来ます。
「拡散近似(7)」に続きます。