「Factory Physics」ではGI/G/mにおける平均待ち時間の近似式として
を提示しています。しかし、その理由を「Factory Physics」は明らかにしていません。ここでは、私の推測する理由を紹介します。
GI/G/mにおける平均待ち時間の近似式に課せられるいくつかの条件を考えます。すると次のようなものがあります。
- 1) M/M/mの時に、に一致すること
- 2) M/G/1の時に、
- ・・・・・(2)
- と一致すること。(「M/G/1における待ち時間の式の導出(1)」参照)
- 3) 重負荷極限定理(「拡散近似(8)」参照)
- ・・・・・(3)
- を満たすこと。
式(1)は、これらの条件1)〜3)を満たすものとして導出されたと考えられます。
まず1)を満たすことは、M/M/mでは、
なので、これらを(1)に代入すれば
になるので明らかです。
次に2)を満たすことは、M/G/1では、
なので、これらを(1)に代入すれば
となります。ここで「M/M/1における待ち時間の式の導出(1)」から
- ・・・・・(4)
なので
- ・・・・・(2)
式(2)と一致します。
最期に3)を満たすことですが、まず「M/M/mにおける待ち時間の式の導出(1)」から
- ・・・・・(5)
ただし
- ・・・・・(6)
です。(6)から
- ・・・・・(7)
ここでとすると分母の最後の項だけが残るので
- ・・・・・(8)
(1)と(5)から
よって
よって
- ・・・・・(9)
ここで(8)を考慮すると
よって(3)を満足します。
以上で、式(1)が決められた理由の推測を終ります。