M/G/∞の出発過程がポアソン過程であることの証明の試み(3)

M/G/∞の出発過程がポアソン過程であることの証明の試み(2)」の続きです。
M/G/∞待ち行列で、全ての装置が処理中になる確率がゼロであることの証明を試みます。


背理法で考えます。
M/G/∞待ち行列で、(無限台ある)全ての装置が処理中である確率がゼロより大きいとします。ただし、装置の利用率uu<1であるとします。
ここで、「全ての装置が処理中である」という事象をA、この事象が起きる確率をP(A)で表すことにします。まず、

  • P(A)<1・・・・・(1)

です。なぜなら、P(A)=1ならば、この待ち行列を構成する個々の装置も常に処理中ということになりu<1という仮定に反することになります。ですから(1)が成り立ちます。次に、この待ち行列の中の装置を1列に並べます。そして先頭の装置を取り出し、これを装置1と呼ぶことにします。「装置1が処理中である」という事象をB_1、この事象が起きる確率をP(B_1)と表します。この定義から

  • P(B_1)=u・・・・・(2)

です。さらに、この待ち行列を構成する(無限台の)装置の中から装置1を除外した装置の集合S_1を考えます。「S_1内の全ての装置が処理中である」という事象をC_1、この事象が起きる確率をP(C_1)とします。事象C_1が起きたことを前提にしたB_1が起きる条件確率をP(B_1|C_1)で表します。すると

  • P(A)=P(B_1|C_1)P(C_1)・・・・・(3)

となります。仮定から

  • P(A)>0・・・・・(4)

なので、(3)から

  • P(B_1|C_1)>0・・・・・(5)

です。


もしP(B_1|C_1)<1ならば、事象C_1が起きたことを前提にして、B_1が起きない確率、すなわち「装置1が空いている」確率P(\bar{B_1}|C_1)もゼロより大きい確率を持ちます。ここで「装置1が空いていて、他の装置が全て処理中である」事象をD_1、この事象が起きる確率をP(D_1)で表すと、

  • P(D_1)=P(\bar{B_1}|C_1)P(C_1)・・・・・(6)

となります。ところが装置1は無限台あるどの装置とも同等ですから、n番目の装置についてD_1に対応する事象D_nとその確率P(D_n)が対応し、

  • P(D_n)=P(D_1)・・・・・(7)

になります。そして、任意の自然数m.nについてD_mD_nは互いに素なので、これらの和事象D_{sum}の確率は

  • P(D_{sum})=\Bigsum_{k=1}^{\infty}P(D_k)・・・・・(8)

になります。ところが(6)はゼロより大きかったので、(7)(8)より、P(D_{sum})は無限大に発散してしまいます。これは矛盾です。よってP(B_1|C_1)=1となります。


もしP(B_1|C_1)=1であるならば、装置が1台だけ空いていてその他の装置はみな処理中、という状態は存在しない、ということになります。しかし、もしそうだとすると、装置が処理終了する時には「必ず」別の装置も処理終了しなければならないことになり、各々の装置が独立に動作するという仮定に反します。よって、P(B_1|C_1)=1でもあり得ないことになります。


よって、最初の仮定、
「全ての装置が処理中である確率がゼロより大きい」
が間違っていることになります。よって、ジョブが到着した時には空いている装置は必ず存在します。よってジョブは待たないことになります。
以上で、「M/G/∞の出発過程がポアソン過程であることの証明の試み(1)」の

  • a) M/G/∞では、ジョブは待つことはない

を証明出来たようです(まだ、自信がありませんが)。