「サイバネティックス」という本の「第2章 群と統計力学」(8)

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その次はこれを検討します。

したがってf^*(x)がほとんど常にとる値は、
\Bigint_0^1f(x)dx
となる。

どうして「したがって」なのでしょう? 以下は私の推測です。


Tは保測変換なので

  • \Bigint_0^1f(Tx)dx=\Bigint_0^1f(x)dx

よって、任意の自然数nについて

  • \Bigint_0^1f(T^nx)dx=\Bigint_0^1f(x)dx・・・・・(1)

ところで

 (2.21)  f^*(x)=\lim_{N\rightar\infty}f_N(x)

であったので、この両辺をxに関して積分し、式(1)を用いると

  • \Bigint_0^1f_N(x)dx=\frac{1}{N+1}\Bigsum_{n=0}^N\Bigint_0^1f(T^nx)dx=\frac{1}{N+1}\Bigsum_{n=0}^N\Bigint_0^1f(x)dx=\Bigint_0^1f(x)dx

ここでN\rightar\inftyとするとf^*(x)の定義から

  • f_N(x)\rightar{f^*(x)}

になるので

  • \Bigint_0^1f^*(x)dx=\Bigint_0^1f(x)dx

ところがf^*(x)dxはほとんど常に(つまり測度1のxの集合について)一定なので

  • \Bigint_0^1f^*(x)dx=f^*(x)

よって

  • f^*(x)=\Bigint_0^1f(x)dx・・・・・(2)

この式の左辺は「「サイバネティックス」という本の「第2章 群と統計力学」(4)」の最後で示したように、無限時間での平均です。一方、右辺は集合Eにおける平均です。これで

  • 時間平均=集合平均

を示すことが出来ました。

こうして、ギブスが位相平均を時間平均でおきかえたことが正当化される

わけです。


それにしても、実際の統計力学への適用において、変換Tが集合Eにおいて「測度可遷的」であるかどうかが問題になります。その問題は私には手に負えないので、ひとまず、おいておきます。
それよりもまず、集合E統計力学において何を意味し、点xや変換Tが何を意味するのかを、説明しておくべきでしょう。この本「サイバネティックス」ではその部分が抜けております。では、次は、それについて(浅学を省みず)ご説明します。


「サイバネティックス」という本の「第2章 群と統計力学」(9)」に続きます。