上位エントリ:サイバネティックス
先行エントリ:「サイバネティックス」という本の「第2章 群と統計力学」(6)
その先の検討に進みます。が「測度可遷的」な場合には
がある範囲の値をとるようなの集合の測度は、ほとんど常に1か0となる。これはがほとんど常に一定でなければ不可能なことである。したがってがほとんど常にとる値は、
(2.23)となる。
・・・・・・
バーコフの定理では、測度0または確率0のの値の集合を除いて、(2.25)を得る。・・・・・・こうして、ギブスが位相平均を時間平均でおきかえたことが正当化される。
まず
がある範囲の値をとるようなの集合の測度は、ほとんど常に1か0となる。
の解釈ですが、以下のように考えました。
図の2つの赤線ではさんだ領域がのある範囲を示しています。はの値によっていろいろな値をとりますから、この範囲内にあるようなの値からなる集合を考えることが出来ます。それが図で灰色で示した領域です。つまり、範囲の下限を、上限をとすると
であるようなの集合です。これが、変換が測度可遷的であれば、の測度はほとんど常に0か1になる、というのです。
- なぜ「ほとんど常に」と書いてあるのかについては私は分かりません。これは例外的にの測度が0でも1でもないことがあるということを言っているのかもしれません。でもそれは何に対して「ほとんど常に」なのでしょうか?
私が理解しようとして考えた内容は以下のようなものです。
まず、は変換について不変です。これは以下のようにして明らかになります。
のに変換をほどこすと
よって
ここでとすると
よって
- ・・・・・(1)
よっては変換について不変であると私は考えました。
ここから背理法で考察します。上記のの測度が0でも1でもないものと仮定します。次に、の全ての要素に変換を行ったからなる集合をと表すことにします。すると式(1)からの全ての要素についてもは上記の図に示した範囲に入るはずです。よっての定義から
- ・・・・・・(2)
になります。つきにの補集合を考えます。の全ての要素に変換を行ったからなる集合をと表します。ところで変換は集合を自身に変換するので、を変換した集合は、を変換した集合の補集合です。よって
ここで式(1)を用いると、の全ての要素についてもは上記の図に示した範囲から外れるはずです。よっての定義から
よって
- ・・・・・・(3)
になります。式(2)と式(3)から
これは、変換に対して不変な、測度が0でも1でもない集合が存在することになるので「測度可遷性」に反します。よって仮定の「の測度が0でも1でもない」が否定されるので、(すなわち「がある範囲の値をとるようなの集合」)の測度は0か1、ということになります。の範囲を、1つの値だけを含むように狭めることで、がある値をとるようなの集合の測度は0か1になるということになります。これが
これはがほとんど常に一定でなければ不可能なことである。
の意味するところであると理解しました。
「「サイバネティックス」という本の「第2章 群と統計力学」(8)」に続きます。