ローマ神話の発生 ロムルスとレムスの物語
このところ、工場統計力学に関係のある話を書けなくなっている私です。で、今日はこの本の紹介です。
- 作者: 松田治
- 出版社/メーカー: 社会思想社
- 発売日: 1992/08
- メディア: 文庫
- クリック: 1回
- この商品を含むブログ (1件) を見る
ローマ神話というのは実は、ほとんどがギリシア神話なのですね。古代ローマは、神話をまるごとギリシアから輸入したのでした。そしてギリシャの神々とローマの神々の間に対応関係をつけたのです。若干の神々についてその対応をみますと、
- まず、神々の王ゼウスは、ローマではユピテルであるとされ、
- その妃のヘラは、ユーノー
- 知恵と戦いと技芸の女神アテナは、ミネルヴァ
- 狩猟と獣の女神アルテミスは、ディアナ
- 愛と美の女神アプロディテは、ウェヌス、つまり英語でいうところのヴィーナス
- 戦争の神アレスは、マルス
- 工芸と鍛冶の神ヘパイストスは、ウォルカヌス
- 海の王ポセイドンは、ネプトゥーヌス、
というふうに対応づけられています。それで、名前だけをローマの神々に変えてギリシアの神話をそのまま使っています。そんなわけで、ローマ固有の神話というのが非常に少ないのです。
この本は数少ないそんなローマ固有の神話の代表格、ローマの建国者ロムルスとその双子の兄弟レムスについて、物語とその背景の考察を叙述したものです。
ロムルスはローマ人のとっておきの英雄であった。この英雄の周囲に様々な要素が配され、建国伝説が形成された。ローマに伝わる最古の英雄であるだけに、古めかしい神話的モチーフも見られる。・・・・・
・・・・・ここで本書の主旨、構成を簡略に述べておこう。
まずこの伝説を一つのまとまった物語として見直し、「ロムルスの生涯」を組み立てる。本来、寄木細工のように成立した伝説であるから、古代においてもこれといった特定の語りかたがあったわけではない。・・・・細かな点では四分五裂という例もあり、各自が正伝、異伝とするものを並記することが少なくない。そのような場合われわれは、より古い形、より新しい形、より一般的な形という風に分別し、可能な限りそれぞれの形の意義を考えたい。
次にこの生涯を縦糸として、伝説の主要な構成要素にどのような意味がありうるのかを検討する。・・・その要素は、あらかじめ申し上げれば、特定の動植物、神々や女神たち、人間および人間集団などである。
「ローマ神話の発生」の「はじめに」より
古代ローマの祭儀についていろいろウンチクのネタを仕入れるのによい本です。この本の中では、キケロ、オウィディウス、リウィウス、ハリカルナソスのディオニュシオス、プルタルコス、エンニウスなどが引用されています。