薔薇十字団について何かをほのめかすようにして隠す

そこでさっそく招待状を見せると相手は満足しただけではなく、驚いたことに、絶大な敬意を示してこう言った。
「同志よ、ずっとお通り下さい。あなたさまは、お待ち申していた私どもの客人です。」ついでに、よろしければお名前をお聞かせ下されますまいかとの頼みなので、赤い薔薇十字の兄弟(ともがら)ですと答えると、相手は大いに驚きもし、またよろこびもした。


化学の結婚」ヨハン・ヴァレンティン・アンドレーエ著、種村季弘訳、より。

彼らの一致した信条は次のようなものだった。

  1. 何人も、病人を治すこと、しかも無料で治すこと以外の職業活動をしてはならぬ。
  2. 何人も、友愛結社員なるがゆえの特定の制服の着用を強制されず、むしろ国それぞれの民族衣装に適応すべきである。
  3. 同志は毎年、それぞれC.の日に聖霊の家に出頭するか、さもなければ欠席理由を報告しなくてはならぬ。
  4. 同志はそれぞれ不測の場合に後継者となるにふさわしい人物を、あらかじめ物色しておかなくてはならぬ。
  5. R.C.の語を同志の印章とし、合言葉とし、標識とすべし。
  6. 友愛結社の存在は百年間緘黙して明かしてはならぬ。


「友愛団の名声」ヨハン・ヴァレンティン・アンドレーエ著、種村季弘訳、より。

  1. 汝ら騎士は、汝らの結社が悪魔や精霊にではなく、汝らの創造者たる神とその婢女(はしため)たる自然のみに傅(かしず)くものたることを誓わねばならぬ。
  2. 汝らは、あらゆる邪淫、ふしだら、不潔を忌み嫌い、かかる悪徳を汝らの結社に投じてはならぬ。
  3. 汝らはその天与の才能により、救助に値し、また救助を必要とする人間にはあえて救助に参じようとするものである。
  4. 汝らのかかる誉れは世俗的華美をもとめず、高い信望を得るべく用いられるものである。
  5. 汝らは、神の思し召される以上に長生きしようとはせぬ。


化学の結婚」ヨハン・ヴァレンティン・アンドレーエ著、種村季弘訳、より。