英国王妃物語

著者は大著

を著された英国王室関係のトリビアに詳しい森護さんです。この本は小書ながらトリビア満載の本です。(つまり実用性はほとんどない)。この本の中でどうしても皆さんにご紹介したいのは「スティーヴン王妃マティルダ」です。なぜかと言いますと、これが頭が混乱するようなお話だからです。


ヘンリー1世の王妃マティルダは、息子ウィリアムと娘マティルダを産みました。ヘンリー1世はウィリアムを跡継ぎにするつもりでした。ウィリアムの妃にはフランスのアーンジュ伯フールクェの娘マティルダを迎えました。ヘンリー1世の娘マティルダ神聖ローマ帝国皇帝ハインリッヒ5世の妃、つまり皇后になりました。しかしウィリアムは若くして海難事故で亡くなりました。がっくりきたヘンリー1世は今度は甥のスティーヴンを後継者にします。ところが今度は神聖ローマ皇帝ハインリッヒ5世が死んでしまいます。ヘンリー1世は、
「そうだ、皇后マティルダイングランドに呼び戻してイングランド女王にしよう」
と考えます。しかしまだこの時イングランドには女王の例がありませんでした。この構想は廷臣たちの反対に会います。皇后マティルダはスティーブンと結婚したいと思っていましたが、ヘンリー1世は、無理やりアーンジュ伯フールクェの息子ジョアフリーと結婚させます。そして2人の間に生まれたヘンリー2世を後継者にして、スティーヴンの同意を得ます。スティーヴンも妃を娶りました。この妃はフランスのブーローニュ伯ユースタスの娘で、その名前はマティルダでした。こうした状況でヘンリー1世が亡くなります。スティーヴンは約束を反古にして王位についてしまいます。皇后マティルダよりもスティーブン王マティルダのほうが貴族に人気があったからです。こうしてマティルダマティルダの戦いが始まります。内戦の勃発です。


この時代の女性の名前はみんなマティルダだったの?と思うような話です。小説家がこんな小説書いたら読者からそっぽ向かれますね。


10年以上の戦いののち、皇后マティルダが戦いから手を引き、王妃マティルダが死亡したところで停戦の機運が高まります。スティーヴンの王位は認められ、その代わり後継者にはヘンリー2世を指名する、ということで内戦は終了しました。