(妄想)5月の星座
- おとめ座はいろいろな女神や人物にあてられるけれど、今月はエーリゴネーにするね。これもちっともロマンチックじゃないけれど。
それからあちら(と言って西のほうを指す)に見えるこいぬ座は、この場合、エーリゴネーの飼っていた犬のマイラね。
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- オリオンの猟犬ではなかったんですか?
- オリオンの話をする時はそうするけど。でも、この季節ならマイラにしたほうが、夜空を上手に物語に出来るわけね。
- さて昔のこと、うしかい座のイーカリオスは酒の神ディオニューソスを歓待したので神は、イーカリオスにワインの作り方を伝授された。そこでワインを造って味わってみると何ともいえぬ楽しさなので、御神のこの恵みをみんなにも分けてやろうと、イーカリオスは近所の人々にワインを持っていった。ところが、この人たちが飲み過ぎてふらふらしてきたので、この人たちはてっきり毒を盛られたと勘違いして、酔った勢いでイーカリオスを殺してしまったの。そしてその屍を一本の木の下に埋めたんだって。
- 一方イーカリオスの娘のエーリゴネー、おとめ座ね、このエーリゴネーは父親がワインを入れた袋をもって失踪してから、その行方をしきりに尋ね、方々をめぐり歩いたが、父親の行方は分からないままだった。エーリゴネーには忠実な犬のマイラがついて歩いていたんだけれど、このマイラが例の木のそばにさしかかった時に騒ぎ出して、それでイーカリオスの埋められた場所は分かったの。でも、それは悲し過ぎる出来事で、エーリゴネーはその木で首をくくって死んでしまった。ねっ、全然ロマンチックじゃないでしょ?
- こうなる前にどうしてディオニューソスはイーカリオスを助けなかったんですか?
- どうしてでしょうね。私には分からない。でもこのあとディオニューソスはこの人々の上に疫病や飢饉を与えて自分の怒りを示したの。それから人々はこの父娘を毎年、祭でなだめるようになったという話よ。
- なんだかしっくりしません。
- そうね。でも、ギリシア神話ってそういう話が多いわよ。そういえばからす座の話もひどい話よね。
- アポローンがからすの告げ口を真に受けてコローニスを殺してしまったという話ですか?
- そう、神なんだからもっと真実が分かってしかるべきでしょ? そういうところをのちにキリスト教徒に突っ込まれるのよ。
- でもそのほうが人間らしくていいじゃありませんか。ギリシアの神々の話は娯楽になりますが、聖書の神はおそれおおいですよね。
- その話をすると長くなるわね。まずはローマ帝政期のギリシアの人々の精神状態から調べないと・・・・
*1:アテーナイを中心とする地域