上位エントリ:サイバネティックス
先行エントリ:「サイバネティックス」という本の「第3章 時系列、情報および通信」(13)
第3章の最後の部分は難解です。最後の文章は以下の通りですが、なぜ、このような結論が出てくるのか、私には分かりません。
高度の共鳴をもつ物質は、一般にエネルギーと情報を蓄積するのに異常な能力をもち、またこのような蓄積は筋肉の収縮の場合に確かにおこる。
また、生殖に関連する同様な現象は、種から種への場合だけでなく、一つの種の個体のうちにも見出される生体内の化学的物質の異常な特殊性と恐らく何か関係があるであろう。このような考え方は免疫学においてひじょうに重要な意味をもつであろう。
「サイバネティックス」が出版されてから半世紀以上たった今、これらの記述がどの程度有効か、何が反駁されたのか、私は知りたいです。
さて、上に述べた文章までの論旨の流れを追っていきます。もう、この部分には数式は登場しません。
「量子力学は現代物理学が時系列理論の侵入を受けた最も重要な点である。」とウィーナーは書きます。それは未来が確率的にしか決まらないという点で時系列理論が扱うのにふさわしいということです。その次の記述から私の理解が少し曇ってきます。「しかしデータをできるだけ完全にとったときでさえも、われわれは混合性をもった時系列を扱っているのであるから、われわれの系は絶対的なポテンシャル障壁をもたない。」
この文章の中の「混合性をもった時系列」という言葉の意味が分かりません。絶対的なポテンシャル障壁をもたないということはトンネル効果のことを言っているのではないかと推測します。「したがって時間が経過するにつれて、系のいかなる状態も他の任意の状態に変換することができ」 この文は「変換」を「遷移」と読み替えれば理解可能です。「この変換の確率は長時間の平均においては二つの状態の確率・・・に関係する。」ここも分かったような分からないような個所です。そしてウィーナーは量子力学でいう「高度の量子縮退」をもつような状態、つまり高い内部共鳴状態にある物質では「この確率」が高いと言います。「この確率」はどの確率のことを言っているのでしょうか?
そこからさらに飛躍した文章が続きます。
これから想像すれば、アミノ酸の混合物が結合して蛋白質鎖になるときのように、種々の構成要素がいろいろな仕方で緊密に結合しうる系においては、これらの鎖の大部分が似かよっていて、相互に密接に結合しあう段階を経過するような状態は、これらの鎖が異なっている状態よりも安定であろう。
この文章と前の文章のつながりが分かりません。時系列理論がこのことにどう関係してくるのでしょうか?
そしてさらに文章が飛躍しています。
遺伝子とウイルスはこんなふうに増殖するのかもしれないとホールデインは仮説的に提案している。
突然「増殖」の話が出て面食らいます。ちなみにサイバネティックスが出版されたのは1948年で、ワトソンとクリックによるDNAの構造提案(1953年)より前です。ウィーナーはおそらく、当時の一般的な考え方に従って、遺伝子の本体をタンパク質であると想定していたのでしょう。このあとこの考え方の検討が少しあって、その次に、最初に引用した文章が続きます。
今回は私の理解力のなさを露呈しただけのエントリーになってしまいました。