短寿命市場環境と短サイクルタイム(4)

(3)」の最後で

しかしより良いのは、スループットの減少をなるべく少なくしながらWIPを減らす方策を検討することだろう。

と書いた。


ここから話をDBR(ドラム・バッファ・ロープ手法)につなぐことは出来る。すなわち、

である。この時、ラウティングの最初の工程とボトルネック工程の間のWIP数をいくつにすればよいかという問題が発生するが、TOCでは、試行錯誤して決めるべき、と述べている。これはうまい解決法で、このWIP数を数学的に求めようとすると現状の待ち行列理論では困難である。(そのような理論があるかもしれないが私は知らない。)


一方、Factory Physicsの立場からは「スループットの減少をなるべく少なくしながらWIPを減らす方策は何か?」という問いにはどう答えるだろうか? 思いつくのは、スループットWIPの関係ではなく、1つのステーションにおけるスループットと平均待ち時間の関係を示す近似式

  • CT_q=\left(\frac{c_a^2+c_e^2}{2}\right)\frac{u^{sqrt{2(m+1)}-1}}{m(1-u)}t_e・・・・・(1)

を用いて、ジョブの到着間隔の変動を減らすことや装置処理時間の変動を減らす、という方策を導き出すことである。さらに言えば、ジョブの到着間隔の変動は前工程の装置処理時間の変動を反映しているので、結局は工場全体において装置処理時間の変動を減らす、という方策に行き着く。
この方策の効果を簡単な待ち行列ネットワークで定量的に示すことが私にとってのひとつの課題だろう。(「処理時間変動削減の効果」で実行しました。)


さらに思いつく課題を挙げておく。