閉鎖型待ち行列ネットワークの到着定理(2)

閉鎖型待ち行列ネットワークの到着定理(1)」の続きです。


前回「(1)」では、下図

  • 図2

のようなネットワークでしかもジョブが2個存在する場合についてのみ到着定理が成り立つことを確かめた。これを一般化していかなければならない。まず、図2のネットワークのままで、ジョブの数を3つにしてみよう。そうすると状態遷移図は

  • 図6

のようになる。そしてステーション1へのジョブの到着は下図の黒矢印で表わされる。

  • 図7

これらの黒矢印は左から順に、到着時にステーション1に(自分を含めなくて)ジョブが2個、1個、0個ある場合を示す。そしてそれぞれの確率は状態(2,1)、(1,2)、(0,3)の定常状態確率に比例する。これはそれぞれ

  • 図4

での状態(2,0)、(1,1)、(0,2)の状態確率の比に等しい。しかも図4においてはこれら3つの状態確率の和は1になるから状態(2,0)、(1,1)、(0,2)の状態確率とジョブがステーション1へ到着した時のステーション1の状態の確率は等しいことになる。よって、ステーション1に到着するジョブが見るステーション1のジョブ数の確率分布は、ネットワーク内のジョブ数が2の時の定常状態でのステーション1のジョブ数の確率分布と同じである。つまり到着定理が成り立つ。


同様に考えていけば図2の形の待ち行列ネットワークについて、任意のジョブ数について到着定理が成り立つことが分かる。


では、装置が3台直列に並んだ閉鎖型待ち行列ネットワーク

  • 図8

ではどうなるだろうか? まずジョブが1個の場合の状態遷移図は

  • 図9

となる。ジョブが2個の場合の状態遷移図は少しややこしくなるが

  • 図10

となる。ここでステーション1への到着を表す遷移は下図の黒矢印である。

  • 図11

ジョブ到着時ステーション1に別のジョブがある場合は、一番左の黒矢印に対応し、ステーション1が空いている場合は、中央と、一番右の黒矢印に対応する。この3つの遷移の発生確率の比は状態(1,0,1)、(0,1,1)、(0,0,2)の定常状態確率の比と等しくなり、さらにそれは図9における状態(1,0,0)、(0,1,0)、(0,0,1)の定常状態確率の比に等しくなる。さらに状態(1,0,0)、(0,1,0)、(0,0,1)の定常状態確率の和は1になるので図11の3つの黒矢印の遷移の発生確率は図9における状態(1,0,0)、(0,1,0)、(0,0,1)の定常状態確率に等しい。さらに、状態(1,0,0)に対応する黒矢印はステーション1に別のジョブがある場合に対応し、状態(0,1,0)と(0,0,1)に対応する黒矢印はステーション1が空である場合に対応するので、よって、ステーション1に到着するジョブが見るステーション1のジョブ数の確率分布は、ネットワーク内のジョブ数が1の時の定常状態でのステーション1のジョブ数の確率分布と同じである。つまり到着定理が成り立つ。
あとは、図2のネットワークの場合と同様に考えていけば図8の形の待ち行列ネットワークについて、任意のジョブ数について到着定理が成り立つことが分かる。


それにしても装置が1台増えただけで図が急速に複雑になったので、もっと一般的な証明の方法を見つける必要がある。


閉鎖型待ち行列ネットワークの到着定理(3)」に続きます。