閉鎖型待ち行列ネットワークの到着定理(3)
「閉鎖型待ち行列ネットワークの到着定理(2)」の続きです。
さて、一般的な証明を探る前にもう1つ2つ具体例を調べる必要があります。
- なぜ突然、口調が「ですます調」になったかと言いますと、答が見つかったからです。それで余裕が出てきたので「ですます調」に戻りました。とは言え、見つけたことをきちんと表現すると結構な分量になりそうな気がします。順番にやっていきましょう。
一般的な証明を検討する前に調べておきたいのは、2ステーションからなる生産ラインで、2番目のステーションが2台の装置からなるようなものです。
この生産ラインにジョブが1個しかない場合の状態遷移図は下図のようになります。
次にこの生産ラインにジョブが2個ある場合の状態遷移図を書きます。すると下図のようになります。
ステーションに装置が1台しかなかった場合の生産ラインとの違いは、図14で赤丸で囲ったように状態(0,2)→状態(1,1)の遷移確率のレートが
- ・・・・・(3)
になっていて、状態(1,1)→状態(2,0)の遷移確率のレートと異なっていることです。このような場合に「[(1)]」で展開したような論理が成り立つのでしょうか? 図13では式(3)のような遷移確率レートは登場しません。
ジョブがステーション1に到着した時に状態が(2,0)である確率と(1,1)である確率の比は、図から
- ・・・・・(4)
となります。「[(1)]」の時と違って今回は定常状態確率に遷移確率レートをかけたもので比較しなければなりません。式(4)は
- ・・・・・(5)
と変形できます。ところで到着定理が成り立つならばこの比は、生産ライン内にジョブが1個の場合の状態(1,0)と状態(0,1)の定常状態確率、すなわち
- ・・・・・(6)
に等しいことになります。本当にそうなるでしょうか?
まず、図14の黄緑色で示した矢印で遷移が釣合っていることから
よって
- ・・・・・(7)
これを式(5)に代入すると
- ・・・・・(8)
となります。一方、図13から
よって
- ・・・・・(9)
これを式(6)に代入すると
- ・・・・・(10)
式(8)と(10)から
- ・・・・・(11)
が成り立つことが分かります。さらに
- ・・・・・(12)
であることが分かり、この場合、到着定理が成り立つことが分かります。これはたまたまそうなったのでしょうか?
それを調べるために次回は生産ライン内にジョブが3個の場合を調べてみます。
「閉鎖型待ち行列ネットワークの到着定理(4)」に続きます。