閉鎖型待ち行列ネットワークの到着定理(4)

閉鎖型待ち行列ネットワークの到着定理(3)」の続きです。

  • 図12

上記の生産ラインで、ライン内にジョブが2個ある場合には到着定理が成り立つことが分かりました。これはたまたまそうなったのでしょうか? それを調べるために今回は生産ライン内にジョブが3個の場合を調べてみます。3個の場合の状態遷移図は以下のようになります。

  • 図15


今度は、図15の

  • \frac{1}{t_{e2}}p(2,1):\frac{2}{t_{e2}}p(1,2):\frac{2}{t_{e2}}p(0,3)・・・・・(13)

と図14の

  • p(2,0):p(1,1):p(0,2)・・・・・(14)

の2つの比が同じであるかどうかを確かめることになります。図15の黄緑色の矢印における平衡関係から

  • p(2,1)\frac{1}{t_{e1}}=p(1,2)\frac{2}{t_{e2}}

よって

  • p(2,1)=p(1,2)\frac{2t_{e1}}{t_{e2}}・・・・・(15)

今度は図15の青色の矢印における平衡関係から

  • p(1,2)\frac{1}{t_{e1}}=p(0,3)\frac{2}{t_{e2}}

よって

  • p(1,2)=p(0,3)\frac{2t_{e1}}{t_{e2}}・・・・・(16)

式(13)に(15)と(16)を適用すると

  • \frac{1}{t_{e2}}p(2,1):\frac{2}{t_{e2}}p(1,2):\frac{2}{t_{e2}}p(0,3)=p(2,1):2p(1,2):2p(0,3)
    • =p(1,2)\frac{2t_{e1}}{t_{e2}}:2p(1,2):2p(0,3)=p(0,3)\frac{4t_{e1}^2}{t_{e2}^2}:p(0,3)\frac{4t_{e1}}{t_{e2}}:2p(0,3)
    • =\frac{2t_{e1}^2}{t_{e2}^2}:\frac{2t_{e1}}{t_{e2}}:1=2t_{e1}^2:2t_{e1}t_{e2}:t_{e2}^2・・・・・(17)

一方、図14の赤の矢印における平衡関係から

  • p(2,0)\frac{1}{t_{e1}}=p(1,1)\frac{1}{t_{e2}}

よって

  • p(2,0)=p(1,1)\frac{t_{e1}}{t_{e2}}・・・・・(18)

式(14)に「[(3)]」で登場した(7)

  • p(1,1)=p(0,2)\frac{2t_{e1}}{t_{e2}}・・・・・(7)

と(18)を適用すると

  • p(2,0):p(1,1):p(0,2)=p(1,1)\frac{t_{e1}}{t_{e2}}:p(1,1):p(0,2)=p(0,2)\frac{2t_{e1}^2}{t_{e2}^2}:p(0,2)\frac{2t_{e1}}{t_{e2}}}:p(0,2)
    • =\frac{2t_{e1}^2}{t_{e2}^2}:\frac{2t_{e1}}{t_{e2}}}:1=2t_{e1}^2:2t_{e1}t_{e2}:t_{e2}^2・・・・・(19)

式(17)と(19)から

  • \frac{1}{t_{e2}}p(2,1):\frac{2}{t_{e2}}p(1,2):\frac{2}{t_{e2}}p(0,3)=p(2,1):2p(1,2):2p(0,3)=p(2,0):p(1,1):p(0,2)・・・・・(20)

よってジョブが3個の場合も到着定理が成り立つことが分かります。


閉鎖型待ち行列ネットワークの到着定理(5)」に続きます。