閉鎖型待ち行列ネットワークの到着定理(5)

閉鎖型待ち行列ネットワークの到着定理(4)」の続きです。


次に下図

  • 図16

のような生産ラインを考えます。そして装置1へジョブが到着した時の、ネットワーク全体の状態(到着するジョブを除く)の確率分布を調べます。今回の場合は、装置2からも装置3からも装置1へジョブが到着します。


まず、ネットワーク内にジョブが1個だけある場合の状態遷移図です。これは以下のようになります。

  • 図17


次に、ネットワーク内にジョブが2個ある場合の状態遷移図は以下のようになります。

  • 図18


さて、今回の場合、比較するのは図18における

  • p(1,1,0)\frac{1}{t_{e2}}+p(1,0,1)\frac{1}{t_{e3}}:p(0,2,0)\frac{1}{t_{e2}}+p(0,1,1)\frac{1}{t_{e3}}:p(0,1,1)\frac{1}{t_{e2}}+p(0,0,2)\frac{1}{t_{e3}}・・・・・(21)

と図17における

  • p(1,0,0):p(0,1,0):p(0,0,1)・・・・・(22)

になります。式(21)を以下の2つに分解します。

  • p(1,1,0)\frac{1}{t_{e2}}:p(0,2,0)\frac{1}{t_{e2}}:p(0,1,1)\frac{1}{t_{e2}}・・・・・(23)
  • p(1,0,1)\frac{1}{t_{e3}}:p(0,1,1)\frac{1}{t_{e3}}:p(0,0,2)\frac{1}{t_{e3}}・・・・・(24)

(23)と(24)がそれぞれ(22)に等しければ、(21)も(22)に等しいことになるでしょう。


まず(23)については、図18の緑の矢印における平衡関係から

  • p(1,1,0)\frac{r_{12}}{t_{e1}}=p(0,2,0)\frac{1}{t_{e2}}

  • p(1,1,0)\frac{r_{13}}{t_{e1}}=p(0,1,1)\frac{1}{t_{e3}}

よって

  • p(1,1,0)\frac{r_{12}t_{e2}}{t_{e1}}=p(0,2,0)・・・・・(25)
  • p(1,1,0)\frac{r_{13}t_{e3}}{t_{e1}}=p(0,1,1)・・・・・(26)

(25)と(26)を(23)に代入して

  • p(1,1,0)\frac{1}{t_{e2}}:p(0,2,0)\frac{1}{t_{e2}}:p(0,1,1)\frac{1}{t_{e2}}=p(1,1,0)\frac{1}{t_{e2}}:p(1,1,0)\frac{r_{12}}{t_{e1}}:p(1,1,0)\frac{r_{13}t_{e3}}{t_{e1}t_{e2}}
    • =t_{e1}:r_{12}t_{e2}:r_{13}t_{e3}・・・・・(27)


次に(24)については、図18の青の矢印における平衡関係から

  • p(1,0,1)\frac{r_{12}}{t_{e1}}=p(0,1,1)\frac{1}{t_{e2}}

  • p(1,0,1)\frac{r_{13}}{t_{e1}}=p(0,0,2)\frac{1}{t_{e3}}

よって

  • p(1,0,1)\frac{r_{12}t_{e2}}{t_{e1}}=p(0,1,1)・・・・・(28)
  • p(1,0,1)\frac{r_{13}t_{e3}}{t_{e1}}=p(0,0,2)・・・・・(29)

(28)と(29)を(24)に代入して

  • p(1,0,1)\frac{1}{t_{e3}}:p(0,1,1)\frac{1}{t_{e3}}:p(0,0,2)\frac{1}{t_{e3}}=p(1,0,1)\frac{1}{t_{e3}}:p(1,0,1)\frac{r_{12}t_{e2}}{t_{e1}t_{e3}}:p(1,0,1)\frac{r_{13}}{t_{e1}}
    • =t_{e1}:r_{12}t_{e2}:r_{13}t_{e3}・・・・・(30)


さらに(22)については、図17における平衡関係から

  • p(1,0,0)\frac{r_{12}}{t_{e1}}=p(0,1,0)\frac{1}{t_{e2}}

  • p(1,0,0)\frac{r_{13}}{t_{e1}}=p(0,0,1)\frac{1}{t_{e3}}

から

  • p(1,0,0)\frac{r_{12}t_{e2}}{t_{e1}}=p(0,1,0)・・・・・(31)
  • p(1,0,0)\frac{r_{13}t_{e3}}{t_{e1}}=p(0,0,1)・・・・・(32)

(31)と(32)を(22)に代入して

  • p(1,0,0):p(0,1,0):p(0,0,1)=p(1,0,0):p(1,0,0)\frac{r_{12}t_{e2}}{t_{e1}}:p(1,0,0)\frac{r_{13}t_{e3}}{t_{e1}}=t_{e1}:r_{12}t_{e2}:r_{13}t_{e3}・・・・・(33)

(27)と(30)と(33)が等しい比であることが判明したので

  • p(1,1,0)\frac{1}{t_{e2}}+p(1,0,1)\frac{1}{t_{e3}}:p(0,2,0)\frac{1}{t_{e2}}+p(0,1,1)\frac{1}{t_{e3}}:p(0,1,1)\frac{1}{t_{e2}}+p(0,0,2)\frac{1}{t_{e3}}
    • =p(1,0,0):p(0,1,0):p(0,0,1)・・・・・(34)


ここまで確かめたところで、一般の閉鎖型ジャクソンネットワークについて到着定理の証明の検討を始めます。


閉鎖型待ち行列ネットワークの到着定理(6)」に続きます。