アマテラスの誕生

図書館で見かけて題名に魅かれて手に取りました。数ページ読んでいるうちに、これがすばらしい本であることを確信しました。冷静になって考えてみれば、部分的には全て他の研究者によって言われていたことなのですが、それらの仮説の断片が著者によって「現実性のある一つの大きな絵」に組み合わされたような感じで、その絵のすばらしさに参ってしまいました。著者はこの本の中でしばしば「論証の過程はすべて省くが」とか「ここでは詳述できないが」とか述べていますが、それが言い訳ではなく背後にものすごい量の考察が控えていることが感じられます。引用文献数が半端じゃありません。


私が惹かれたのは、日本神話の古代における変遷を扱っているからです。そして天皇制の起源を404年の高句麗に対する敗北に求め、その時に高句麗系の王権思想がタカミムスヒの神の神話の形で入ってきた、という視点にわくわくしました。


考察は手堅く若々しさを感じさせます。それで著者はどんな人だろうと思って巻末を見てまたびっくりしました。「1931年 長崎県生まれ」えっ! じゃあこの本はずっと前に出版された本なの? 一瞬そう思いました。70を過ぎた方がこれほどシャープな本を書けないと思ったからです。ところが2009年1月20日 第1刷発行、でした。えええっ! すごいな〜。うれしくなりました。70過ぎてもこんなに若々しい思索が出来るのだ、ということにうれしくなりました。日本神話や日本の古代史に興味のある方に一読をお勧めします。