プル生産システムのモデル化を目指して(5)

プル生産システムのモデル化を目指して(4)」の続きです。


ネットワーク内にジョブw個あるとします。装置1にジョブが到着する際、[到着定理]から装置1で処理中または待っているジョブ数の平均値は

  • \frac{w-1}{4}・・・・・(19)

になります。今、処理中のジョブの残り処理時間の平均はt_eであり、待っているジョブの平均処理時間もt_eであるので、今、到着したジョブの装置1での平均待ち時間は式(19)から

  • \frac{w-1}{4}t_e

になります。よって、このジョブのこのステーションでのサイクルタイム

  • \frac{w-1}{4}t_e+t_e=\frac{w+3}{4}t_e

になります。よってライン全体のサイクルタイムCT(w)

  • CT(w)=(w+3)t_e・・・・・(20)

になります。この時のX-Factor、x(w)は式(20)から

  • x(w)=\frac{w+3}{4}・・・・・(21)

になります。WIPwなので、スループットTH(w)リトルの法則から

  • TH(w)=\frac{w}{CT(w)}=\frac{w}{(w+3)t_e}・・・・・(22)

になります。よって

  • u(w)=\frac{w}{(w+3)t_e}t_e=\frac{w}{w+3}・・・・・(23)

となります。式(23)をwについて解くと

  • wu(w)+3u(w)=w
  • 3u(w)=(1-u(w))w
  • w=\frac{3u(w)}{1-u(w)}・・・・・(24)

これを式(21)に代入すると

  • x(w)=\frac{\frac{3u(w)}{1-u(w)}+3}{4}=\frac{3}{4}\left(\frac{u(w)}{1-u(w)}+1\right)=\frac{3}{4}\frac{1}{1-u(w)}

この式はwの値に関係なく成立するのでwを省略して

  • x=\frac{3}{4}\frac{1}{1-u}・・・・・(25)

これが

  • 図2(再掲)

uxの関係式です。


もう一度最初に戻ると、

  • 図1

のような生産ラインにおいて、プッシュ方針で運用した場合は

  • x=\frac{1}{1-u}・・・・・(5)

プル方針で運用した場合は

  • x=\frac{3}{4}\frac{1}{1-u}・・・・・(25)

で、プルのほうがX-Factorが25%改善(削減)されていることが明らかになりました。これで「短寿命市場環境と短サイクルタイム(4)」で挙げた課題の1つ

  • DBRの方策は一種のプル方針であるが、プルの効果を数学的モデルで示すことは出来ないか?

を解決したことになります。


プル生産システムのモデル化を目指して(6)」「プル生産システムのモデル化を目指して(7)」に続きます。