プル生産システムのモデル化を目指して(4)

プル生産システムのモデル化を目指して(3)」の続きです。


閉鎖型待ち行列ネットワークの到着定理(8)」で明らかになった到着定理

  • 到着定理
    • ネットワーク全体にジョブがS個あるとして、ある特定のステーションジョブが到着する時のシステム全体の状態(到着するジョブを除く)の確率分布が、このネットワーク全体にジョブがS−1個ある場合の定常状態確率分布に等しい。

を用いて、

  • 図2(再掲)

uxの関係式を求めます。


まず、ジョブが1個の場合は、ステーションでの待ちはないのでサイクルタイム4t_eとなります。これをジョブが1個の時のサイクルタイムという意味で

  • CT(1)=4t_e・・・・・(6)

と書くことにします。この時に利用率u(1)

  • u(1)=\frac{1}{4}・・・・・(7)

になります。この時のX-Factor、x(1)は式(6)から

  • x(1)=1・・・・・(8)

になります。


次にジョブが2個の場合は、上記の到着定理を用いると、装置1にジョブが到着する際、装置1がふさがっている確率はu(1)=1/4です。そうするとこの到着したジョブが装置1を待つ平均時間はt_e/4になります(装置処理時間は指数分布なので、どの時点であっても残り処理時間の平均はt_eになる)。このジョブが装置1で処理される処理時間の平均はt_eなので、このジョブのこの(装置1だけから成る)ステーションでのサイクルタイム

  • \frac{t_e}{4}+t_e=\frac{5}{4}t_e

になります。よってライン全体のサイクルタイムCT(2)

  • CT(2)=5t_e・・・・・(9)

になります。この時のX-Factor、x(2)は式(9)から

  • x(2)=\frac{5}{4}・・・・・(10)

になります。WIPは2なので、スループットTH(2)リトルの法則を用いて

  • TH(2)=\frac{2}{CT(2)}=\frac{2}{5t_e}・・・・・(11)

になります。利用率u(w)スループットTH(w)の間には

  • TH(w)=\frac{u(w)}{t_e}・・・・・(12)

の関係があるので

  • u(w)=TH(w)t_e・・・・・(13)

よって

  • u(2)=\frac{2}{5t_e}t_e=\frac{2}{5}・・・・・(14)

となります。


次にジョブが3個の場合は、到着定理から装置1にジョブが到着する際、装置1で処理中または待っているジョブ数の平均値は2/4=1/2で、また装置1がふさがっている確率はu(1)=2/5です。よって到着したジョブが装置1を待つ平均時間は

  • \frac{2}{5}t_e+(\frac{1}{2}-\frac{2}{5})t_e=\frac{1}{2}t_e

になります。よって、このジョブのこのステーションでのサイクルタイム

  • \frac{1}{2}t_e+t_e=\frac{3}{2}t_e

になります。よってライン全体のサイクルタイムCT(3)

  • CT(3)=6t_e・・・・・(15)

になります。この時のX-Factor、x(3)は式(15)から

  • x(3)=\frac{3}{2}・・・・・(16)

になります。WIPは3なので、スループットTH(3)

  • TH(3)=\frac{3}{CT(3)}=\frac{3}{6t_e}=\frac{1}{2t_e}・・・・・(17)

になります。よって

  • u(3)=\frac{1}{2t_e}t_e=\frac{1}{2}・・・・・(18)

となります。


このように繰り返していけばuxの関係は明らかになりますが、これでは一般的な式を導くことが出来ません。次回は、一般的な式を導くことを試みます。


プル生産システムのモデル化を目指して(5)」に続きます。