プル生産システムのモデル化を目指して(6)

プル生産システムのモデル化を目指して(5)」の続きです。


(5)」では装置が4台直列に並んだ生産ラインについてプル方針の場合の利用率uとX-Factor、xの関係を求めました。ここではこれを少し拡張して、装置がN台直列に並んだ場合のプル方針下におけるux関係式を求めます。


ネットワーク内にジョブw個あるとします。装置1にジョブが到着する際、到着定理から装置1で処理中または待っているジョブ数の平均値は

  • \frac{w-1}{N}・・・・・(26)

になります。今、処理中のジョブの残り処理時間の平均はt_eであり、待っているジョブの平均処理時間もt_eであるので、今、到着したジョブの装置1での平均待ち時間は式(26)から

  • \frac{w-1}{N}t_e

になります。よって、このジョブのこのステーションでのサイクルタイム

  • \frac{w-1}{N}t_e+t_e=\frac{w+N-1}{N}t_e

になります。よってライン全体のサイクルタイムCT(w)

  • CT(w)=(w+N-1)t_e・・・・・(27)

になります。この時のX-Factor、x(w)は式(27)から

  • x(w)=\frac{w+N-1}{N}・・・・・(28)

になります。WIPwなので、スループットTH(w)リトルの法則から

  • TH(w)=\frac{w}{CT(w)}=\frac{w}{(w+N-1)t_e}・・・・・(29)

になります。よって

  • u(w)=\frac{w}{(w+N-1)t_e}t_e=\frac{w}{w+N-1}・・・・・(30)

となります。式(30)をwについて解くと

  • wu(w)+(N-1)u(w)=w
  • (N-1)u(w)=(1-u(w))w
  • w=\frac{(N-1)u(w)}{1-u(w)}・・・・・(31)

これを式(28)に代入すると

  • x(w)=\frac{\frac{(N-1)u(w)}{1-u(w)}+N-1}{N}=\frac{N-1}{N}\left(\frac{u(w)}{1-u(w)}+1\right)=\frac{N-1}{N}\frac{1}{1-u(w)}

この式はwの値に関係なく成立するのでwを省略して

  • x=\frac{N-1}{N}\frac{1}{1-u}・・・・・(32)

これが、装置がN台直列に並んだ生産ラインをプル方針で運用した場合のux関係式です。


一方、同じ構成の生産ラインをプッシュ方針で運用した場合のux関係式は、「プル生産システムのモデル化を目指して(2)」とほぼ同じように検討して

  • x=\frac{1}{1-u}・・・・・(33)

となります。


(32)と(33)を比べると、プルにするとX-Factoer

  • \frac{N-1}{N}・・・・・(34)

倍に縮小する効果があることが分かります。