プル生産システムのモデル化を目指して(7)

プル生産システムのモデル化を目指して(5)」の続きです。


(5)」では装置が4台直列に並んだ生産ライン

  • 図1

においてプッシュで運用した場合とプルで運用した場合の利用率uX-Factoer xの関係を比較し、プッシュの場合は

  • x=\frac{1}{1-u}・・・・・(5)

プルの場合は

  • x=\frac{3}{4}\frac{1}{1-u}・・・・・(25)

であることを導きました。これをグラフに表してみます。ただしプルの場合はuxWIP wによって決まり、w自然数でなければならないので、uxは離散した値になります。つまり「(5)」の式(21)

  • x(w)=\frac{w+3}{4}・・・・・(21)

式(23)

  • u(w)=\frac{w}{(w+3)t_e}t_e=\frac{w}{w+3}・・・・・(23)

w=1,2,\cdotsを代入して、その結果をグラフにプロットしていくことになります。その結果は以下のようになります。

  • 図4

これから分かるように同じ利用率の条件で比べれば、プルのほうがプッシュに比べてX-Factoerが小さくなっています。ということは同じスループットを達成する場合、プルのほうがプッシュに比べてサイクルタイムが短いことを意味しています。たとえば、利用率90%でプッシュの時のX-Factoerは10.0ですが、プルの場合は7.5に短縮されます。
同じX-Factoerの条件で比較すれば、プルのほうがプッシュより高い利用率を達成することが出来ます。ということはより高いスループットを達成することが出来ます。たとえば、X-Factoer=5の条件で比較するとプッシュの場合の利用率は80%なのに対してプルの場合の利用率は85%と若干、増えます。これに伴いスループットは85/80=1.06で約6%増加することになります。


それにしても、プルによる利用率の増加はそれほど大きくありません。それではTOC(Theory of Constraint:制約理論)はどうしてあれほど喧伝されたのでしょうか? そこで思いつくのは、TOCのDBR手法は、ボトルネック工程からのプルであるということです。上記図1の生産ラインでは全ての工程の装置の平均処理時間が等しいため、どの工程もボトルネック工程でした。もし、最後の装置4だけがボトルネックであって、他の3台の装置の処理時間が若干短かったら、プルによるスループット増大の効果はどの程度になるでしょうか?
これを計算したいのですが式(25)は、4つのステーションが同等である、という仮定のもとに導かれました。4つのステーションが同等でない場合には、別の工夫が必要になります。


プル生産システムのモデル化を目指して(8)」に続きます。