「DBRの効果を示すモデル(2)」の続きです。
ここでは
のような2つの簡単なステーションからなる閉鎖型ジャクソンネットワークを考えます。しかもどのステーションも1台の装置からなるとします。さらに、2つの装置は同じ平均処理時間を持つとします。この場合、ステーションからのジョブの出発過程がポアソン分布ではないことは、ネットワーク内にジョブが1個しかない場合のことを考えると明らかになります。
今、装置2からジョブが出発したとして、次に装置2からジョブが出発するまでの間隔を考えてみます。この場合は、同じジョブが装置2に戻って来て処理されて出発するまで出発はないですから、このジョブが装置1で処理され次に装置2で処理される時間が出発間隔になります。この場合、待ち時間がないのはジョブが1個しかないからです。そうすると、出発間隔は、同じ平均を持つ指数分布で変動する2つの処理時間の和になります。同じ指数分布で変動する確率変数の和はアーラン分布で変動するという「アーラン分布」での結論からすれば、2つの処理時間の和は2次のアーラン分布
- ・・・・・(1)
- ただしは装置の平均処理時間
になります。「アーラン分布」で示したように(1)の分布の変動係数は
- ・・・・・(2)
となります。つまり、指数分布よりも変動係数は小さくなります。
では、ネットワーク内のジョブが2個以上の場合には出発過程はどうなるでしょうか? ジョブ数が非常に大きくなれば、ほとんど常に装置2は処理中になり、出発時刻の間隔は処理時間に近くなるでしょう。つまり出発過程の分布は処理時間の分布、つまり指数分布に近くなるでしょう。では、ネットワーク内のジョブ数が増えるにしたがって出発間隔の分布が2次のアーラン分布から指数分布に移行する様を捉えることは出来ないでしょうか?
このネットワークの状態をで表すことにします。ここではステーション1でのジョブ数、はステーション2でのジョブ数を表します。ネットワーク全体でのジョブ数をで表します。すると
- ・・・・・(3)
となります。装置2から今、ジョブが出発したとします。その時点でのネットワークの状態を、装置2でのジョブ数が0の場合(下図の)と1以上の場合(下図の)に分けて考えます。
次にジョブが装置2から出発するのは、状態の場合だけです。もしネットワークがこの状態にあるのであれば、の間に
の確率でジョブの出発が起こります。ジョブの出発が1度でも起これば、別の状態(出発後)になったと考えます。最初のジョブ出発の時刻をとおきます。そして、状態との確率をの関数としてそれぞれとで表します。そうすると、このネットワークにおいて装置2からの間に次の出発が発生する確率は、時間とともに
- ・・・・・(4)
に従って変化していくことになります。