(妄想)七月の星座


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  • 今晩の空ではまず北のほう、北極星の上のりゅう座の話をします。この竜は、西の果てのヘスペリデスの園にある黄金のリンゴの木を守っている竜です。何から守っているかと言えば、さらに天頂のほうに見えるヘルクレス座、つまりヘラクレスから守っているのね。
  • それはローマ人がなまって呼んだから。でも英語ではもっとひどいわよ。ハーキュリーズって言うんだから。イギリスってヨーロッパの北の端でしょ? 田舎なのよ。もうすごく、なまっちゃっている。あんな言葉習わなくてよいから。
    • ほんとですか?
  • よい子はラテン語ギリシア語(コイネーとイオニア方言の両方ね)を学びなさい。あとはサンスクリットね。それはともかく、この竜はヘラクレスからリンゴを守っています。ヘラクレスは神のお告げによって、そのリンゴを奪ってこなければならなかったの。ヘラクレスには12の難業が課せられていて、これはそのひとつです。
    • なぜ、難業が課せられたのですか?
  • それはヘラクレスが狂って、自分の妻と子供たちを殺してしまったから、その償いに神によって課せられたのがこれらの難業なの。4月に話したネメアの獅子退治やレルネのヒドラ退治もその1つね。
    • なぜ、ヘラクレスは自分の奥さんと子供を殺してしまったのですか?
  • それは神々の王ゼウスの妻ヘラが、ヘラクレスを狂わしたからなの。
    • なぜ、ヘラはそんなことを?
  • それは、ヘラクレスが妾の子だからよ。ゼウスが浮気して出来た子だからよ。ヘラクレスが憎くてしかたがなかったのよ。
    • そんなあ。
  • でもね、ヘラがいたからこそヘラクレスは英雄になれたのよ。わかる? ヘラクレスは「ヘラに栄光を与える者」という意味なのよ。
    • ・・・・・・正直、わかりません・・・。
  • でも、このことは覚えておいていてね、ずっと。
    • ・・・・・・・・・はい。
  • 次にいきます。ヘルクレス座から南に下ってへびつかい座へび座、これは医聖アスクレピオスと、アスクレピオスが治療に使っていたへびね。5月にからす座のところで少し話したアポロンとコロニスの間に出来た息子ね。神アポロンの性(さが)を受け継いでアスクレピオスは、病を退治する力を持っていたの。でも、最後に死人をよみがえらすところまでいってしまったので大神ゼウスの怒りにふれ、ゼウスの稲妻で殺されてしまった。そして天に上げられたのがこのへびつかい座ね。よみがえらせたのはアテーナイ王テーセウスの息子ヒュッポリュトスという話だけど、ツァーデ(この頃、私はこの名前で彼女に呼ばれていた。意味は「いなご」だという。なぜ「いなご」なのだか・・)はエウリピデスの「ヒュッポリュトス」は読んだ?
    • いいえ。
  • じゃあ読んだほうがよいと思う。
    • そうですか。
  • 気のない返事ね・・・まあ、いいわ、あなたはきっと読むから。
  • それから、今の時期しか見えないさそり座、南の地平線の上に見えるでしょ? この話もしておきます、簡単にね。太陽神ヘリオスの息子パエトーンは、ある日、父にせがんで太陽を運ぶ馬車の運転をさせてもらったの。で、パエトーンは太陽の道筋、つまり黄道に馬車を進めたのだけれど、そこにいた大きなさそりに馬が驚いたのをうまく落ち着かせることが出来なくて、太陽は道筋を大きくはずれることになったの。それを見咎めたゼウスによって、パエトーンは馬車もろとも稲妻に撃たれて地上に落ちることになったの。落ちた先はエリダノス川だけど、この川もまた星座になっています。今は見えないけど・・・・・。