ほぼ等間隔の系列の重ね合せ系列の2乗変動係数(1)
ほぼ等間隔でイベントが発生する系列を3つ重ね合わせて作った系列のイベントの間隔の2乗変動係数を求めてみます。
- ほぼ等間隔という言葉を使ったのは、「つなぎの式の導出(4)」の考察に寄与することを目指しているためです。
- イベントという言葉は抽象的な「出来事」を意味します。それはジョブの到着でもよいですし、ジョブの処理終了でもよいです。
重ね合わせる前の3つの系列を系列1、2、3と名前をつけておきます。また、1つの系列におけるイベントの間隔の長さは2乗変動係数の値に影響しませんので(2乗変動係数は無次元の値なので)ここでは間隔の長さを1とします。系列1でイベントが発生した時点を1つ取り出し、そこをにとります。次に系列1でイベントが発生するのはの時です。からの間に系列2と3のイベントが1回だけ発生するはずです(系列2,3もそれぞれ間隔1を持つほぼ等間隔の系列ですから)。しかし系列1と系列2のイベントのズレ、そして系列1と系列3のイベントのズレは、長期間には変動し*1、[0,1]の間のどの長さのズレも等しい確率で実現されると考えられます。ここで、から系列2または3のどちらか早いほうのイベントまでの間隔がどのような分布になるか探っていきます。
ところで、上の図における他の2つの間隔については探らなくてもよいのでしょうか? つまり
や
の間隔がどんな分布になるかを調べる必要はないのでしょうか? 実は、これらの3つの間隔の分布は皆、同じになります。その理由は図2や図3の赤矢印で示した間隔は、ある系列のイベントからそのイベントに続く最も早い別の系列のイベントへの間隔という意味では、図1における赤矢印で示した間隔と実質的に同等です。系列1,2,3は全て同等ですから、これらの間隔の分布も図1における間隔の分布と同じになります。*2 そうすると図1の間隔の2乗変動係数を求めれば、それが重ね合わせた系列のイベントの間隔の2乗変動係数になることが分かります。
系列2のイベントも系列3のイベントも[0,1]の間を一様分布で分布しています。そこで、これらのうちどちらか早いほうまでのイベントの間隔の分布を求めるには「min(X,Y)の確率密度関数」で考えた手法を応用すればよいです。つまり、系列2と3のイベントの分布関数を求め、を求めればよいことになります。まず系列2のイベントの確率密度関数は
になりますので、分布関数は
- ・・・・・(1)
になります。よって図1の間隔の確率密度関数は
- ・・・・・(2)
図1の間隔を示す確率変数をで表すと、
よって
- ・・・・・(3)
よく考えてみれば1の長さの線分を3つに分けた線分の平均を求めていることになりますから、これは当たり前の結果です。次に
よって
- ・・・・・(4)
よって変動は
よって2乗変動係数は
と求めることが出来ます。ここでの3は3つの系列の重ね合せであることを表しています。
「ほぼ等間隔の系列の重ね合せ系列の2乗変動係数(2)」に続きます。