2次のアーラン分布の系列の重ね合せ系列の2乗変動係数(1)

ここで考えたいのは2次のアーラン分布を重ねる場合です。
2次のアーラン分布では「アーラン分布」で示したように2乗変動係数 c^2は1/2です。また、2次のアーラン分布は「アーラン分布」で示したように、指数分布に従う確率変数 Xを2つ足して出来た確率変数の分布と考えることが出来ます。そこで下図のように2つの状態を持ち、状態2から1に移る時にイベントが発生するマルコフ過程を用いてモデル化することが出来ます。このモデルでは、イベントの発生源が今、状態1にあるとして時間 dtの間に状態2へ遷移する確率は \lambda{dt}であり、イベントの発生源が今、状態2にあるとした場合に時間dtの間に状態1へ遷移する確率も同じく\lambda{dt}であるとしています。

さて、イベント発生間隔が同一の2次アーラン分布に従う2つの系列の重ね合せを検討します。2つの系列の名前を系列1、2とします。系列1でイベントが発生した時刻のうち一つを選んで、その時刻をt=0と置きます。この次に系列1あるいは2のいずれかにおいて発生するイベントまでの間隔を考えます。t=0の時の系列2の状態は図1の状態1か2のいずれかです。図1から2つの状態の定常状態確率は等しく1/2であることが分かります。さらに系列1と2は独立なので系列1でイベントが発生した時刻に系列2がどちらの状態にあるかは1/2の確率で決まることが分かります。


今、t=0で系列2が状態1であると仮定します。そうすると、それぞれの系列において次のイベントが発生するまでの間隔は、両方とも同じ2次のアーラン分布になります。
さてここで、平均k/\lambdak次のアーラン分布f(t;k,\lambda)で表すことにします。すなわち

  • f(t;k,\lambda)=\frac{\lambda^kt^{k-1}}{(k-1)!}\exp(-\lambda{t})・・・・・(1)

です。そうすると、系列1での次のイベントまでの間隔の確率密度関数も系列2での次のイベントまでの間隔の確率密度関数

  • f(t;2,\lambda)=\lambda^2t\exp(-{\lambda}t)・・・・・(2)

となります。f(t;k,\lambda)に対応する分布関数をF(t;k,\lambda)で表すことにします。f(t;2,\lambda)に対応するF(t;2,\lambda)は、

  • F(t;2,\lambda)=\Bigint_o^t\lambda^2\tau\exp(-\lambda\tau)d\tau=\left[-\lambda\tau\exp(-\lambda\tau)\right]_0^t+\Bigint_0^t\lambda\exp(-\lambda\tau)d\tau
    • =-\lambda{t}\exp(-\lambda{t})+\left[-\exp(-\lambda\tau)\right]_0^t=-\lambda{t}\exp(-\lambda{t})-\exp(-\lambda{t})+1

よって

  • F(t;2,\lambda)=-\lambda{t}\exp(-\lambda{t})-\exp(-\lambda{t})+1・・・・・(3)

よって、t=0からいずれか早いほうのイベントまでの間隔の分布の確率密度関数g_1(t)は、「min(X,Y)の確率密度関数」の式(2)から

  • g_1(t)=2f(t;2,\lambda)[1-F(t;2,\lambda)]=2\lambda^2t\exp(-\lambda{t})[\lambda{t}\exp(-\lambda{t})+\exp(-\lambda{t})]
    • =2\lambda^3t^2\exp(-2\lambda{t})+2\lambda^2t\exp(-2\lambda{t})=\frac{1}{2}\frac{(2\lambda)^3t^2}{2!}\exp(-2\lambda{t})+\frac{1}{2}(2\lambda)^2t\exp(-2\lambda{t})
    • =\frac{1}{2}[f(t;3,2\lambda)+f(t;2,2\lambda)]

よって

  • g_1(t)=\frac{1}{2}[f(t;3,2\lambda)+f(t;2,2\lambda)・・・・・(4)

となります。


今度は、t=0で系列2が状態2であると仮定します。そうすると、系列1での次のイベントまでの間隔の確率密度関数f(t;2,\lambda)のままですが、系列2での次のイベントまでの間隔の確率密度関数

  • f(t;1,\lambda)=\exp(-\lambda{t})・・・・・(5)

になります。f(t;1,\lambda)に対応するF(t;1,\lambda)は、

  • F(t;1,\lambda)=\Bigint_0^t\lambda\exp(-\lambda\tau)d\tau=\left[-\exp(-\lambda\tau)\right]_0^t=1-\exp(-\lambda{t})

よって

  • F(t;1,\lambda)=1-\exp(-\lambda{t})・・・・・(6)

よって、t=0からいずれか早いほうのイベントまでの間隔の分布の確率密度関数g_2(t)は、「min(X,Y)の確率密度関数」の式(2)から

  • g_2(t)=f(t;2,\lambda)[1-F(t;1,\lambda)]+f(t;1,\lambda)[1-F(t;2,\lambda)]
    • =\lambda^2t\exp(-\lambda{t})\exp(-\lambda{t})+\lambda\exp(-\lambda{t}[\exp(-\lambda{t})+\lambda{t}\exp(-\lambda{t})]
    • =\lambda^2t\exp(-2\lambda{t})+\lambda\exp(-2\lambda{t})+\lambda^2t\exp(-2\lambda{t})=2\lambda^2t\exp(-2\lambda{t})+\lambda\exp(-2\lambda{t})
    • =\frac{1}{2}(2\lambda)^2t\exp(-2\lambda{t})+\frac{1}{2}(2\lambda)\exp(-2\lambda{t})=\frac{1}{2}[f(t;2,2\lambda)+f(t;1,2\lambda)]

よって

  • g_2(t)=\frac{1}{2}[f(t;2,2\lambda)+f(t;1,\lambda)]・・・・・(7)

となります。


t=0では系列2の状態が状態1である確率が1/2、状態2である確率が1/2なので、系列2の状態に条件をつけない場合、t=0からいずれか早いほうのイベントまでの間隔の分布の確率密度関数g(t)

  • g(t)=\frac{1}{2}[g_1(t)+g_2(t)]・・・・・(8)

になります。(8)に(4)と(7)を代入して

  • g(t)=\frac{1}{4}[f(t;3,2\lambda)+2f(t;2,2\lambda)+f(t;1,2\lambda)]・・・・・(9)

t=0からいずれか早いほうのイベントまでの間隔を確率変数Tで表します。E(T)は(9)と「アーラン分布」の式(10)を用いて

  • E(T)=\frac{1}{4}\left[\frac{3}{2\lambda}+2\frac{2}{2\lambda}+\frac{1}{2\lambda}\right]=\frac{1}{\lambda}・・・・・(10)

E(T^2)は(9)と「アーラン分布」の式(11)を用いて

  • E(T^2)=\frac{1}{4}\left[\frac{12}{4\lambda^2}+2\frac{6}{4\lambda^2}+\frac{2}{4\lambda^2}\right]=\frac{13}{8\lambda^2}・・・・(11)

よって変動V(T)

  • V(T)=E(T^2)-E(T)^2=\frac{5}{8\lambda^2}

よって2乗変動係数c(2)^2

  • c(2)^2=\frac{V(T)}{E(T)^2}=\frac{5}{8}・・・・・(12)

これで2次のアーラン分布の系列を2つ重ね合わせた系列の間隔の2乗変動係数を求めることが出来ました。


2次のアーラン分布の系列の重ね合せ系列の2乗変動係数(2)」に続きます。