1.3. 待ち行列ネットワーク・モデルの定義、パラメータ値決定、評価:Quantitative System Performance

1.2.2.複数サービス・センター」の続きです。

1.3. 待ち行列ネットワーク・モデルの定義、パラメータ値決定、評価
1.3.1.定義


 特定のシステムの待ち行列ネットワーク・モデルを定義することは、待ち行列ネットワーク・モデルの諸属性とコンピュータ・システムの諸属性の間の密接な対応によって比較的簡単になされる。例えば、待ち行列ネットワーク・モデル内のサービス・センターは自然にコンピュータ・システム内のハードウェア・リソースとそれらのソフトウェア・キューに対応し、待ち行列ネットワーク・モデル内の客は自然にユーザやコンピュータ・システム内のトランザクションに対応する。
 待ち行列ネットワーク・モデルは我々がこれまで示してきたより豊富な属性の集合を持ち、コンピュータ・システムとの対応を拡張する。この豊富さの例として、客が到着するレートを指定すること(作業負荷を処理するあるトランザクションを表現するのによく適した方法)は負荷強度を記述する3つの可能な平均の1つでしかない。2番目の方法はモデル内の客の数を言うことである。(この選択肢はバッチ作業負荷を表現するのによく適している。) 3番目の方法は客の数と、個々の客が会話の間で「考える」(つまり、端末を用いる)平均時間を指定することである。(この選択肢は相互に作用する負荷を表現するのによく適している)。図1.4に、この最後の方法を用いて負荷強度を記述するように図1.3のモデルを改造した。図1.5はもともとのサービス要求時間(CPUでは3秒のサービス、3つのディスクではそれぞれ1,2,4秒のサービス)を持つこのモデルについて作業負荷が1名から50名までの対話するユーザよりなり、各々が30秒の平均考慮時間を持つ場合のシステム応答時間とCPU稼動率をグラフ化する。やはりモデルの振舞は直感と経験と質的に整合していることに注意しよう。

  • 図1.4 端末駆動作業負荷を持つモデル
  • 図1.5 端末駆動モデルの性能尺度

 この豊富さの別の例として、ほとんどのコンピュータ・システムは数種類の識別可能な作業負荷コンポーネントを持っており、これまで我々が考察してきた待ち行列ネットワーク・モデルでは単一の客クラス(全ての客は本質的に同じ振舞を示す)しかなかったが、複数の客クラスを用いることで1つの待ち行列ネットワーク・モデル内でシステムの作業負荷コンポーネント同士を区別し、それらの客クラスの各々は自分の負荷強度(我々が説明したどの方法によっても指定できる)とサービス要求時間を持つことが可能である。例えば、4つの作業負荷コンポーネント、すなわち、トランザクション処理、バックグラウンド・バッチ、対話型データベース問合せ、対話型プログラム開発環境、があるコンピュータ・システムを直接モデル化することは可能である。モデルを定義する際、4つの客クラスと関係するサービス・センターを指定することが出来る。このモデルのパラメータ値を決定する際、個々のクラスについて負荷強度を提供する(例えば、トランザクション処理には10要求/分の到着レート。バックグラウンド・バッチは2個の並列プログラミング・レベル。25名の対話型データベース・ユーザで、その各々が対話と対話の間に平均2分の間考える。10名の対話型プログラム開発環境ユーザで、その各々が対話と対話の間に平均15秒考える。)。我々はまた各々のクラスについて各々のサービス・センターでサービス要求時間を提供出来る。モデルを評価する際、我々は性能尺度を全体でも(例えば、総CPU稼動率)、またクラス毎にも(例えば、バックグラウンド・バッチジョブによるCPU稼動率や対話型データベース・クエリについての応答時間)得ることが出来る。


1.3.2.パラメータ値決定」に続きます。