1.3.2.パラメータ値決定:Quantitative System Performance

1.3.1.定義」の続きです。

1.3.2.パラメータ値決定


 待ち行列ネットワーク・モデルのパラメータ値決定は、その定義と同様、比較的簡単である。既存システムの待ち行列ネットワーク・モデル内の1名の客についてCPUサービス要求時間を計算することを想像しよう。我々は作動中のシステムを観察し2つの数量、つまり、CPUがビジーである秒の数と、処理されたユーザ要求(これらの要求はトランザクションやジョブや会話である)の数、を測定する。次に、個々の要求に起因するCPUの秒の数の平均、すなわち要求されるパラメータ、を決定するためにビジー時間を要求完了数で割る。
 待ち行列ネットワーク・モデルの主な強みは「what if(もし〜だったら)」質問の答を得るためにパラメータを変更することが比較的容易であることである。セクション1.2.2の例に戻ろう。

  • もしディスク間のI/O動作をバランスさせたらどうなるだろうか? (個々のディスクのサービス要求時間を\frac{1+2+4}{3}=2.33秒に設定してモデルを再評価する。応答時間は32.1秒から20.6秒に低下する。
  • もし作業負荷をその後20%増加させたらどうなるだろうか? (到着レートを0.2{\times}1.2=0.24要求/秒に設定してモデルを再評価する。応答時間は20.6秒から26.6秒に増加する。
  • 次にCPUを30%速くなるようにアップグレードしたらどうなるか? (CPUでのサービス要求時間を3/1.3=2.31秒に設定してモデルを再評価する。応答時間は26.6秒から21.0秒に低下する。)


このような修正解析を実行するにはかなりの洞察が必要になる場合がある。というのは、モデルの評価から得られる性能尺度は入力として提供される負荷強度とサービス要求時間と同じ程度だけしか正確ではなく、構成や負荷の変更のこれらのパラメータへの個々の影響を予測することは必ずしも容易ではないからである。上記の最初の「what if」質問について考えよう。もしシステムのディスクが物理的に同一であると仮定するならばディスク動作をバランスすることの主要効果は、個々のディスクでのサービス要求時間に平均値を設定することでモデルのパラメータの値に反映することが出来る。しかし、そこには変更の副次効果が存在するかもしれない。例えば、ディスクアームの動きの総数は減少するだろう。システムはその結果、個々のユーザの総ディスク・サービス要求時間が若干減少することになるだろう。もしこの副次効果が予想されるのであれば、それをモデルのパラメータの値に反映させることは容易であり、評価する際そのモデルは性能尺度の正確な値を生み出すであろう。もしそうでなければ、モデルは若干悲観的な結果をもたらすことになるだろう。都合のよいことには、修正の主要効果は、それが性能に対して支配的であるならば、比較的予想し易い傾向がある。
 複数客クラスを持つモデルは多くの「what if」質問に答えることを促進するので単一客クラスを持つモデルよりも一般的である。(もしバックグラウンド・バッチの量が50%減少したら会話応答時間はどのくらい改善されるか?) しかし単一クラス・モデルは特にパラメータ値を決定し易く、解析者の側ではあまり仮定を要求しないという利点を持っている。現代のコンピュータ・システム測定ツールを用いて、リソース消費を負荷コンポーネント毎に正しく決定することは、特にシステム・オーバヘッドとI/Oサブシステムの動作の領域においては困難であることで有名である。単一クラス・モデルはずっと簡単にかつ正確にパラメータ値を決定出来るので、それらはそれらが適しているような質問に答えるのに複数クラス・モデルより迅速であり、信頼性が高い。


1.3.3.評価」に続きます。