2.5. 感度分析:Quantitative System Performance

2.4. 作業負荷の特徴づけ(2)」の続きです。

2.5. 感度分析


 コンピュータ・システム解析者は皆、問題の多い仮定を導入しなければならないような状況に遭遇する。感度分析はそのような仮定がスタディの結論に疑いを投げかける程度を決定するために使用することが出来る。感度分析は多くの形式をとることが出来る。最も普通なもののうち2つは、以下のものである。

  • 解析者は問題の仮定についての結果のゆるぎなさをテストするだろう。それを行うことは仮定のさまざまな変形について何回もモデルを評価することを含む。
  • 解析者は期待する性能についての境界を、仮定の極端な値についてモデルを評価して得るだろう。

 不正確な測定データはしばしば感度分析を促す原因である。この状況に立ち向かう感度分析の役割を示すためにセクション2.3で紹介したCPU置き換えのケーススタディに戻ろう。図2.2に示すように、この方法は必要とする15件の別々の実験を1ベンチマークあたり一つ、採用した。個々の実験は3つのフェーズからなっていた。すなわち、既存システムはベンチマークのうちの1つを実行している間に測定され、待ち行列ネットワーク・モデルが構築され妥当性を確認され、このモデルは、各々の作業負荷コンポーネントのCPUサービス要求時間パラメータを操作することによって、新しいCPUでのベンチマーク性能を予測するために用いられた。
 システムのI/O活動のかなりの割合が使用可能な測定ツールによって特定の作業負荷コンポーネントに帰着されなかったので、妥当性確認フェーズの間、困難に遭遇した。例えば、測定期間の間の総スワップ数と、1スワップあたりの平均ディスク・サービス要求時間を決定することは可能であったが、どのユーザあるいは作業負荷コンポーネントスワップの「犠牲者」であるかを決定することは不可能であった。仮にこのスタディが単一クラス・モデルに基づいていたならば、これは問題ではなかったであろう。しかし目的は4つの作業負荷コンポーネントそれぞれへのCPU置き換えの影響を評価することであったので、複数クラス・モデルが要求された。
 この測定されたI/O活動を4つの作業負荷コンポーネントの間で割当てるさまざまな方法は若干のモデルの入力パラメータについてさまざまな値をもたらした。驚くことではないが、モデルからさまざまな応答時間の予測がもたらされた。例として、ベンチマークの1つにおいて、ファイル修正トランザクションについて測定された応答時間は10秒で、一方、測定されたI/O活動を4つの作業負荷コンポーネントの間で割当てる、異なるしかし同程度に根拠のある、方法について、モデルは応答時間を6、7、11秒と予測した。(同様に、他の3つの作業負荷コンポーネント応答時間についてこのモデルからまことしやかな諸結果が得られた。)
 モデルが応答時間を6秒と予測した場合における入力の集合について考えよう。より遅いCPUに置き換えることを反映するためにCPUサービス要求時間が調整された時、このモデルは、応答時間が7.2秒であると予測した。新しいシステム上でファイル修正トランザクション応答時間が7.2秒であると主張するのは理に合わない。というのは既存のより速いシステム上で測定された応答時間は10秒だったからである。また、応答時間は20% \left(\frac{7.2-6.0}{6.0}\right)増加すると主張するのも理に合わない。というのは、CPU置き換えの予想効果が、作業負荷コンポーネントの間で測定されたI/O活動を割り付けるのに使用した方法にについて鈍感であると信じる理由がないからである。しかし、我々はそのような鈍感さを仮定し、次にこの仮定をテストすることが出来る。表2.6は既存CPUと新CPUを持つシステムについてI/O活動割付の3つの方法についての予想応答時間を示している。3つの方法について応答時間の絶対値は異なっているが、予想変化率はそうではない。よって、CPU置き換えの影響は、ファイル修正トランザクション応答時間において大体20%の増加になる、つまり10秒(測定された値)から12秒になる、と結論することが出来る。(他の3つの作業負荷コンポーネントについて同様の結果が得られた。)


2.6. 洞察の源」に続きます。