2.7. まとめ:Quantitative System Performance

2.6. 洞察の源」の続きです。

2.7. まとめ


 待ち行列ネットワーク・モデルを用いたコンピュータ・システム解析の最も挑戦的な側面はモデルの定義やパラメータ値決定、評価の技術的詳細ではない。むしろ、待ち行列ネットワーク・モデル化の一般的「方法論」を特定のコンピュータ・システム解析の状況に合わせて調整する過程である。前者は教えるが簡単だが、あいにく後者は経験を通して最もよく学ばれる。この章で我々は、この方法論の顕著な側面を示すために選ばれた一群のケーススタディを提示することによって、読者に他の人々の経験を共有することを試みた。我々が強調した点の中には以下のことがある。

  • 待ち行列ネットワーク・モデル化は本質的にトップダウン過程であり、そこではシステムの低レベルの詳細はその高レベルの性能特徴と無関係であると仮定されている。
  • 待ち行列ネットワーク・モデルは抽象物なので、モデル化スタディを実施する際、多くの仮定がなされる。これらの仮定は簡便さや、測定値の妥当性や、評価のし易さが動機になっている。なされた仮定や、それらの導入の動機や、それらのもっともらしさについての議論が明白であることは重要である。
  • モデル化スタディを実施することは、モデルの定義やモデルのパラメータ値を決定するために用いる測定やモデルを評価するのに用いられる技術や特定のモデル化スタディの目的の間に存在する依存性のために繰り返し過程である。
  • モデルの予測能力についての核心は、たぶん選ばれたマイナーな修正を含む、多くの測定期間に渡る繰り返しの妥当性確認によって得ることが出来る。
  • システム修正を含むスタディで用いる場合、待ち行列ネットワーク・モデルは性能の絶対値よりずっと正確に相対性能を予測する。
  • モデル化スタディの目的の明確な理解はモデルにおける、そしてモデル化作業における単純さに寄与することが出来る。
  • システムあるいは作業負荷の修正の主要効果を表現することに集中することも単純さに寄与することが出来る。
  • 作業負荷の特徴づけは挑戦的な、本質的に不明確な過程である。有用な洞察はこの不明確さにかかわらず得ることが出来る。階層的に作業負荷を特徴づけることは柔軟性を達成するのに役立つ。
  • 感度分析は、疑わしい仮定がスタディの結論に疑いを投げかける程度を決定するために用いることが出来る。感度分析の2つの普通な形式は仮定のさまざまな変形に関するモデル出力の安定性をテストすることと、仮定の極端な値についてモデル出力の境界を得ることである。
  • 価値のある洞察は、単に予測フェーズにおいてだけでなく、モデル化サイクルの全体から得られる。