5.3.2.ボトルネック除去の効果:Quantitative System Performance

5.3.1.ケーススタディ」の続きです。(目次はこちら

5.3.2.ボトルネック除去の効果


 今まで我々はボトルネック・センターに最も関心を持ってきた。ボトルネック・センターはスループットを最大でも1/D_{max}に制限する。もしデバイスをより速いものに置き換えることによってか、あるいは、作業の一部を他のデバイスに移すことによってかのいずれかでボトルネックを緩和したら何が起こるだろうか? いずれの場合でも、D_{max}は削減され、よってスループット楽観的境界、1/D_{max}、は増加する。この改善の限界は、2番目に高い処理要求時間を元々持っているセンターによって課せられる。第1ボトルネックと対照させて、このセンターを第2ボトルネックと呼ぶ。

  • 図5.4 第2と第3の漸近的境界


 3つのサービスセンターを持ち(K=3)、平均考慮時間が15秒で(Z=15)、センターで5、4、3秒の処理要求時間(D_1=5D_2=4D_3=3)の作業負荷を持つモデルを考察しよう。図5.4は個々のセンターに対応する性能についての重負荷楽観的境界を示す線で補われた、この例の楽観的漸近的境界を示す。このようなグラフは第1ボトルネックを緩和することによって可能になる性能改善の程度の視覚的な表現を提供する。ボトルネック・センターでの負荷が軽減されるにつれて、スループットについての重負荷楽観的境界は上のほうに移動する一方、平均応答時間についての重負荷楽観的境界は(バッチ作業負荷については点(0,0)の回りに、端末作業負荷については点(0,-Z)の回りに)下向きに旋回する。軽負荷漸近もまた変化するが、それらは重負荷漸近がそうであるよりかは、どの単一のセンターでの処理要求時間についてずっと鈍感である。
 学ぶべき重要な教訓は重負荷時の性能を向上させることについて、ボトルネック以外のどのセンターを改善することが無益であることである。ボトルネック以外のセンターでの処理要求時間を短縮することは軽負荷漸近だけを改善し、その改善は通常、取るに足らない。図5.5はこの例のシステムについて第1と第2のボトルネックでの速度を独立に2倍にすることの(処理要求時間を半分にすることの)漸近的境界への影響を比較している。重負荷では、性能の向上は第1ボトルネックでの要求時間が短縮された場合のみ明白であることに気づきなさい。

  • 図5.5 さまざまな処理要求時間を短縮することの相対効果


5.3.3.修正解析の例」に続きます。