5.4.バランスのとれたシステムの境界(2):Quantitative System Performance
「5.4.バランスのとれたシステムの境界(1)」の続きです。(目次はこちら)
バランスのとれたシステムについて、第6章で提示するテクニックは特に簡単な形式を持っている。各々のサービスセンターの稼動率は以下で与えられる。
(我々は、直感的であろうと正式にであろうと、今これを正当化するつもりはない。) 稼動率の法則により、システムのスループットは
ただしは各々のセンターでの処理要求時間である。
、、をそれぞれ、我々が評価したいモデルのセンターにおける処理要求時間の最大、平均、最小を示すとしよう。2つの関係するバランスのとれたシステム、つまり、全てのセンターで処理要求時間であるシステムと、全てのセンターで処理要求時間であるシステム、のスループットによって、先ほどのシステムのスループットの境界を決める。
個のセンターと個の客と最大処理要求時間を持つ全てのシステムにおいて、最も低いスループットを持つシステムは全てのセンターで処理要求時間を持つバランスのとれたシステムであるので、これらの不等式は成立する。同様に、個のセンターと個の客と最小処理要求時間を持つ全てのシステムにおいて、最も高いスループットを持つシステムは全てのセンターで処理要求時間を持つバランスのとれたシステムである。平均応答時間についての対応する境界は以下のようになる。
より狭いバランスのとれたシステムの境界は、最大処理要求時間、のみでなく、総要求時間、、(あるいは等価的に、平均要求時間、)で制約することによって得ることが出来る。ある与えられた総処理要求時間を持つ全てのシステムのうち、最も高いスループット(と最も低い平均応答時間)を持つシステムは、全ての処理要求時間が等しい(つまり、、)であるようなシステムである。これは、負荷の増加による待ちの増加は負荷の等量の減少による待ちの減少より大きいという我々の直感を裏付ける。よって、楽観的境界は
と
で与えられる。楽観的バランスのとれたシステム境界は楽観的漸近的境界の重負荷部分と(で示すことになる点で)交差することに注意しよう。この点を超えると、バランスのとれたシステム境界は漸近的境界と一致するように定義される。
同様に、総要求時間と最大要求時間を持つ全てのシステムのうちで、最も低いスループットを持つシステムは個の、要求時間を持つセンターと残りのセンターでゼロの要求時間を持つ。(が整数でないかもしれないという事実が直感を邪魔するが、境界の妥当性の邪魔はしない。) よって悲観的境界は
と
である。
表5.2にバッチ、端末、トランザクションについてのバランスのとれたシステムの境界をまとめた。アルゴリズム5.2はバッチと端末の作業負荷についてこれらの境界をどのように計算出来るかを示している。(トランザクション作業負荷についての計算は自明である。) バッチ作業負荷について、平均応答時間の境界は直線である。また、端末作業負荷について平均応答時間の楽観的境界も直線である。しかし、端末作業負荷についてスループットのバランスのとれたシステム境界と応答時間の悲観的バランスのとれたシステム境界はに関して線形ではなく、よって興味のあるの値毎に別々に計算しなければならない。
- アルゴリズム5.1を用いて漸近的境界を計算する。
- 楽観的バランスのとれたシステム境界が楽観的漸近的境界と交差する点を決定する。バッチ作業負荷については
- 端末作業負荷については
- 楽観的バランスのとれたシステム境界はを超えるところでは漸近的境界と一致するように定義されるので、1からまでを計算する必要があるだけである。
- 平均応答時間についてバランスのとれたシステム境界を計算する。バッチ作業負荷については、境界は以下の点を通る線である。
- 楽観的境界
- と
- 悲観的境界
- と
- 端末作業負荷については、境界は以下の点を通る線である。
- 楽観的境界
- と
- 悲観的境界
- 端末作業負荷の悲観的境界はについて線形でないので、表5.2の式を用いて興味のある全ての個数について計算しなければならない。
- 表5.2の式を用いて興味のあるの範囲についてスループットのバランスのとれたシステム境界を計算する。(ここでも、これらはについて線形ではない。)
- アルゴリズム5.2 クローズド・モデルのバランスのとれたシステム境界
「5.5.まとめ」に続きます。