5.5.まとめ:Quantitative System Performance

5.4.バランスのとれたシステムの境界(2)」の続きです。(目次はこちら

5.5.まとめ


 この章ではシステムの性能尺度の境界を得るためのテクニックを紹介してきた。境界は表5.1と5.2にまとめられ、それらを計算するための手順はアルゴリズム5.1と5.2で与えられる。漸近的境界とバランスのとれたシステムの境界は多くの理由で重要である。すなわち、

  • それらは計算が非常に簡単なので、手計算によってでさえ(一旦DD_{max}が分かればそれらは少しの算術演算を要求 するだけである)、それらはシステムの振舞についての粗い感触を得る迅速な方法である。
  • それらはボトルネック・サービスセンターの重大な影響を明らかにする。ボトルネック・センターに影響を与えないシステムの変更は性能に関する重負荷境界を変更しない。よって、ボトルネック要求時間D_{max}を持つ「「全ての」」システムについてのスループット曲線は、直線1/D_{max}の下に位置するように制約を受ける。この限界を超えて性能を改善するためには、何らか の方法でボトルネック・センターでの要求時間を短縮することが必要である。
  • 第1ボトルネックと一緒に第2ボトルネックを示した図は第1ボトルネックでの要求時間を削減する、システムに対するさまざまな修正によって実現可能な改善の程度についての洞察を提供する。
  • システム設計とシステム規模決定の早期段階で、境界スタディは構成のグループがひとつの選択肢として扱われることが可能であるという利点を提供する。これは上述の、ボトルネック・センターの重大な影響のためである。


 基本法則を用いると、センターの稼動率とスループットについての境界を、システム・スループットについての漸近的境界とバランスのとれたシステムの境界から計算することが出来る。表5.1と5.2のシステム・スループット境界は単にスループットD_kをかけることによってセンターkの稼動率についての境界に変形される(というのは稼動率の法則はU_k(N)=X(N)D_kと述べているからである)。同様に、センターkスループットについての境界はスループットV_kをかけることによって 得られる(強制フローの法則、X_k(N)=X(N)V_kによる)。
 後続の諸章で、我々は性能尺度の境界でなくて特定の値を計算するための方法を提示する。これらの値は、軽負荷と重負荷の楽観的漸近的境界と悲観的バランスのとれたシステムの境界に漸近的に近づく滑らかな曲線を形作る。