6.4.1.オープンモデルの解法(1):Quantitative System Performance

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6.4.1.オープンモデルの解法


 オープン・モデル(トランザクション作業負荷を持つモデル)について、主要出力尺度の1つであるシステム・スループットは入力として与えられる。このため、これらのモデルの解法は特に単純である。興味のある各々の性能尺度のために適用する諸公式をここに挙げる。

  • 処理キャパシティ
    • オープン・モデルの処理キャパシティ、\lambda_{sat}、は飽和する到着レートである。これは以下によって与えられる。
      • \lambda_{sat}=\frac{1}{\max_kD_k}=\frac{1}{D_{max}}
    • 以下の導出において、我々は\lambda<\lambda_{sat}と仮定する。
  • スループット
    • 強制フローの法則により、もし\lambda客/秒がネットワークに入るならば、システム出力レートもまた\lambda客/秒でなければならない。同様に、もし各々の客がデバイスkに平均V_k回の訪問を要求するならば、デバイスkでのスループット\lambda{V_k}訪問/秒でなければならない。よって
      • X_k(\lambda)=\lambda{V_k}
  • 稼動率
    • 稼動率の法則により、デバイスの稼動率はスループットかける処理時間に等しい。よって
      • U_k(\lambda)=X_k(\lambda)S_k=\lambda{D_k}
    • (ディレイ・センターの場合、稼動率は存在する客の数の平均であると解釈しなければならない。)
  • 滞在時間
    • センターkでの滞在時間、R_k(\lambda)、はそのセンターで客によって、待ちと処理の両方で費やす総時間である。ディレイ・タイプのサービスセンターについては、キューイングの要素がないので、R_k(\lambda)は単に処理時間かける訪問回数である。つまり、
      • R_k(\lambda)=V_kS_k=D_k    (ディレイ・センター)
    • キューイング・センターについては、R_kは処理についやされる総時間と他の客が処理を完了するのを待ってついやされる総時間の合計である。前者の要素はV_kS_kである。後者の要素は、客が到着した時にすでにキュー内にいる客を待って費やされた時間である。A_k(\lambda)が到着した客が見た時にキュー内にある客数の平均を示すとすると、待ちの要素はV_k[A_k(\lambda)S_k]である。(仮定によって、セクション6.5で検討するように、新しいジョブが到着する時に処理中のジョブの完了までの予想時間はそのジョブの処理時間に等しい。) よって、キューイング・センターについては滞在時間は
      • R_k(\lambda)=V_k[S_k+S_kA_k(\lambda)]=D_k[1+A_k(\lambda)]
    • で与えられる。分離可能ネットワークを構築する際になされた仮定が暗示していることは、センターkへの到着時に見たキューの長さ、A_k(\lambda)、は平均待ち行列Q_k(\lambda)に等しいということである。よって
      • R_k(\lambda)=D_k[1+Q_k(\lambda)]
    • これは、リトルの法則を用いてQ_kを書き直すと、
      • R_k(\lambda)=D_k[1+\lambda{R_k}(\lambda)]=\frac{D_k}{1-U_k(\lambda)}  (キューイング・センター)
    • である。この式は、U_k(\lambda)\rightar0R_k(\lambda)\rightar{D_k}、や、U_k(\lambda)\rightar1R_k(\lambda)\rightar\inftyという直感にアピールする性質を示す。
  • 待ち行列
    • リトルの法則により
      • Q_k(\lambda)=\lambda{R_k}(\lambda)
        • ディレイ・センターの場合
          • =U_k
        • キューイング・センターの場合
          • =\frac{U_k(\lambda)}{1-U_k(\lambda)}
  • システム応答時間
    • システム応答時間は全てのサービスセンターでの滞在時間の合計である。
      • R(\lambda)=\Bigsum_{k=1}^KR_k(\lambda)
  • システム内の平均客数
    • システム内の平均客数はリトルの法則を用いて、あるいは、全てのセンターでの待ち行列長を合計することによって計算出来る。
      • Q(\lambda)=\lambda{R(\lambda)}=\Bigsum_{k=1}^KQ_k(\lambda)

6.4.1.オープンモデルの解法(2)」に続きます。