7.3.1.単一クラス・モデルとの対照:Quantitative System Performance
「7.3.ケーススタディ」の続きです。(目次はこちら)
7.3.1.単一クラス・モデルとの対照
このケーススタディでは仮定に基づいたシステムの単一クラス・モデルと複数クラス・モデルを対照させ、これらのモデルを使って、CPUアップグレードの応答時間への影響を予測する。我々の目的は単一クラスと複数クラスのモデルから得ることの出来る予測の間の定性的な差を示すことである。
仮定に基づいたシステムは、CPUとディスクの2つのリソースを持っている。バッチと他の会話型の2つの作業負荷要素が存在する。測定は以下の情報を提供している(時間の単位は秒)。
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このシステムの単一クラス・モデルを構築するために、要するに測定データが作業負荷タイプに基づいて区別しなかったと想像して、単一の「平均」客クラスを定義する。我々のモデルは2つのサービスセンター(CPUとディスク)と、単一の、端末クラスを持つ。このクラスは考慮時間が13.271秒()の35個の客を持つことになる。処理要求時間はCPUで0.602秒()、ディスクで0.448秒()になる。
複数クラス・モデルは2つの処理センターと2つのクラス、すなわち、客10個のバッチ・クラスと考慮時間30秒の客25個の端末クラスを持つことになる。バッチ処理要求時間はCPUとディスクでそれぞれ0.10秒と0.90秒になる。
表7.1は単一クラスと複数クラスのモデルについての、基準システムについてと、CPUスピードを5倍増加させたアップグレードしたシステムについての出力を示す。単一クラス・モデルと複数クラス・モデルは基準システムについてはよく一致している。しかし、CPUアップグレードしたシステムについては、単一クラス・モデルの予測を複数クラス・モデルの「全体」予測と比べた場合でさえ、かなり異なっている。例えば、複数クラス・モデルはアップグレードしたCPUを持つシステムでは5.26の総スループットを示すが、それに比べて単一クラス・モデルでは2.11である。さらに、単一クラス・モデルは平均応答時間の60%改善を予測しているが、複数クラス・モデルはバッチ・ジョブに関して80%の改善を、しかし会話ユーザについては200%の悪化を予測している。これらの装置は作業負荷の性質によって説明出来る。単一クラス・モデルでは、個々の「平均」ジョブはかなりの量のディスク処理を要求するので、CPUのスピードアップは、この第2ボトルネックによって課せられた性能制約のために限られた効果しか持たない。複数クラス・モデルでは、バッチ・クラスは非常にCPU制約であるが、会話型クラスは非常にI/O制約である。よって、CPUのスピードを増加させるとバッチのスループットを非常に増加させるが会話型クラスには直接のメリットはほとんどない。さらに、バッチ・スループットが増加したために、会話型クラスはディスク・センターでのバッチ・クラスとの競合の増加に苦しみ、よって性能悪化を経験する。
要約すれば、この例は待ち行列ネットワーク・モデルの使用法について2つの重要な点を示している。
- モデルは直感が分からないような効果を予測出来る。この場合、CPUアップグレードによって性能が悪化し得るという直感に反する結果を得た。
- 非常に異質な作業負荷を持つシステムの単一クラス・モデルは、「平均」ジョブについての性能予測は不正確なためと、平均の結果から特定のクラスについての予測を得ることが出来ないための、両方によって、人を誤らせる結果を与えることがある。
「7.3.2.作業負荷増加のモデル化」に続きます。