9.3.1.単一クラス・モデル(1):Quantitative System Performance

9.3.メモリ制約」の続きです。(目次はこちら

9.3.1.単一クラス・モデル


 客が処理要求時間と同様にメモリ要求量についても区別出来ないと仮定する。メモリ制約の値をMで示す。M個より少ない数の準備完了客が存在する時にもしある客が準備完了になると(つまり、N-M個以上の考慮中客が存在する時)、その客は即座にアクティブになる。M個以上の準備完了客が(よってM個のアクティブ客が完全にメモリを占有している)時にもしある客が準備完了になると、その客はメモリが使用可能になるまで待たなければならない。
 我々の仕事は中核サブシステム、プラス、このメモリ・キューのためのFESCを定義することである。第8章に記したように、負荷依存サービスセンターはその待ち行列長とともに変化するスループットを持つ。四角3内のFESCの待ち行列長は準備完了客の数、すなわち四角2内部のどこかにいる客の数に一致する。実際のシステムでは、スループットは準備完了客の数によってどのように変化するだろうか? この質問の答は図9.3にメモリ制約あり(実線)となし(点線)の両方について定性的に示されている。一旦メモリ制約に達すると(一旦M個の準備完了客がいると)、準備完了客の数の増加からはスループットのさらなる増加は出てこない。なぜそうなるのか? これらの追加の準備完了客はアクティブではなくて(メモリ)待ちであるからである。これは表9.5によって明示される。ただしX(n)n個の客個体数を持つ中核サブシステムのスループットを示す。


 X(n)を決めるのは単純なことである。我々は中核サブシステムを構成する処理リソースから成る低レベル・モデルを定義する。我々はこのモデルを個々の実現可能な客個体数nについて、すなわち1からMまでのアクティブ客の個々の数について評価する。個々の個体数についてスループットを書き留める。これらのスループット高レベル・モデルで使用するFESCを定義するのに用いられるX(n)である。これはアルゴリズム9.1の中でより精密に述べられる。

1.

  • 中核サブシステムを構成する処理リソースを表現するサービスセンターから成る低レベル・モデルを定義する。

2.

  • 分離可能であるこのモデルを、実現可能な個々の個体数、n=1,...,Mについて評価する。負荷依存スループットX(n)を記録する。

3.

  • 中核サブシステム・プラス・メモリ・キューとフロー等価である負荷依存サービスセンターを、待ち行列nでのそのスループット\mu(n)
    • n=1,...,Mならば
      • \mu(n)=X(n)
    • n>Mならば
      • \mu(n)=X(M)
  • と設定することで作成する。

4.

  • このFESCと外部環境から成る高レベル・モデルを定義する。外部環境は、端末作業負荷の場合、考慮時間Zを持つN個の客であり、トランザクション作業負荷の場合、外部到着レート\lambdaである。分離可能であるこのモデルを評価する。

アルゴリズム9.1:単一クラス・メモリ制約システム

9.3.1.単一クラス・モデル(2)」に続きます。