9.3.1.単一クラス・モデル(2):Quantitative System Performance

9.3.1.単一クラス・モデル(1)」の続きです。(目次はこちら

 このアルゴリズムの適用例として、1個のCPUと2台のディスクと512Kバイトのメモリを持つ小さなタイムシェアリング・システムを考察しよう。平均1会話が、3秒のCPU処理、1つのディスクで4秒の処理、もう一方のディスクで2秒の処理、100Kバイトのメモリを要求する。オペレーティング・システムは150Kバイトのメモリを要求するので、最大3ユーザが同時にメモリに滞在出来る。15ユーザが存在し、60秒の平均考慮時間を持つ。我々が知りたいのは、

  • 平均応答時間
  • 準備完了ユーザの数の平均値
  • アクティブ・ユーザの数の平均値
  • メモリ・パーティション占有率の分布
  • メモリへのアクセスを待つのに費やされる平均時間
  • 個々の処理リソースの稼動率
  • 仮に265Kメモリが追加されたとした場合にもたらされる応答時間の改善量

である。我々はアクティブ・ユーザが1個、2個、3個についての中核サブシステムを解析することから始める。この低レベル・モデルは処理要求時間が1会話あたりそれぞれ、3、4、5秒である3つのセンターを持つ。我々は以下に示す負荷依存スループットを得る。

次にN=15個の客とZ=60秒と、「中核サブシステム+メモリ・キュー」とフロー等価な以下のように定義された負荷依存センターを持つ高レベル・モデルを定義する。

このモデルを評価して、表9.6に示す基本アウトプットを得る。

スループット:0.175会話/秒
FESCでの平均滞在時間:25.7秒
FESCでの平均待ち行列長:4.5
FESCでの待ち行列長分布

表9.6 基本アウトプット


会話応答時間は直接利用可能で、25.7秒である。準備完了客の平均数も同じで、4.5である。FESCでの待ち行列長分布から総時間の3.8%で中核サブシステムがアイドルであり、総時間の8.6%で1個のアクティブ客が存在し、総時間の12.2%で2個のアクティブ客が存在し、総時間の75.4%で3個のアクティブ客が(つまり、3個以上の準備完了客が)存在する。よって平均アクティブ客数は2.6である。これをリトルの法則、N=XRに代入すると、一旦メモリ・パーティションが得られたあと中核システム内で費やす平均時間は2.6/0.175=14.9秒であることが分かる。よって客はメモリへのアクセスを待って25.7-14.9=10.8秒を費やす。デバイス稼動率を計算するために稼動率の法則、U_k=XD_kを利用する。CPUでは、稼動率は0.175\times3.0=52.5%であるはずである。2台のディスクでは、稼動率はそれぞれ70%と50%になるはずである。
 メモリ追加の影響を評価するために中核サブシステムに客が4,5,6個ある場合のFESCレートを計算する。(新しい構成によってさらに3個のユーザを収容することが出来る。) FESCはいまでは以下に示す特性を持つ。

15ユーザとこのFESCからなる高レベル・モデルを解析すると、20.7秒の応答時間を得る。これは20%の改善である。
 アルゴリズム9.1に記述した手法を使用することはその精度とその効率の両方から来ている。その精度は、端末と中核サブシステムが分解可能であるという事実から来ている。すなわち客が中核サブシステム内で相互作用するするレートは客が考慮中状態と準備完了状態の間を遷移するレートよりずっと大きい。その効率は2つの要因から来ている。

  • FESCを定義する際に用いた負荷依存スループットは効率的に得ることが出来る。この場合、中核サブシステムのモデルは単一クラス分離可能待ち行列ネットワークである。
  • 導出された高レベルモデルは効率的に解析できる。この場合、それもまた単一クラス分離可能待ち行列ネットワークである。

単一クラス・メモリ制約システムを解析するこの方法は、非分離可能待ち行列ネットワークを効率的に評価するためにフロー等価と階層的モデル化を使用することの良い例である。

9.3.2.独立なメモリ制約を持つ複数クラス」に続きます。