9.6.2.1.システムの要点:Quantitative System Performance

9.6.2.VAX/VMSのモデル」の続きです。(目次はこちら

9.6.2.1.システムの要点

 上述のように、VMSにおけるメモリ管理はスワッピングとページングとページ・フレームの共用キャッシュを通して遂行される。
 物理的メモリ要求量、滞在セット・サイズ、は個々のプロセスに関係する。アクティブ・プロセスはその滞在セット・サイズに等しいページ・フレームの数を保証される。そのページ・フレームの割当て全体をすでに使っているプロセスでページ・フォールトが発生したならば、滞在セットから除去するページを選択するためにFIFOページ置換方針が使用される。
 VMSは観測された動作に応じてプロセスの滞在セット・サイズを調整する試みをしないので、アクティブ・プロセス間でページ・フレームの効率的な割付はありそうにない。FIFOは悪いページ置換方針として名高いので、滞在セット・メンバシップの効率的な選択は等しくありそうにない。これらの欠点を補うために、VMSはアクティブ・プロセス間で共用されているページ・フレームのキャッシュを維持している。あるプロセスの滞在セットからあるページが削除されるとそれはこの共用ページ・キャッシュに追加される。キャッシュ内に保持されたページでのフォールトはディスクI/Oなしに解決出来る。よって我々はページ・フォールト(それはI/Oをもたらさないかもしれない)とページング転送(そこではページ・フォールトに応じてページがディスクから検索される)の間を区別しなければならない。(実際には、ページは効率のために群がっており、数個のページが1回のページング転送で転送される。)共用ページ・キャッシュの最大と最小のサイズはシステム・パラメータで調節される。もしキャッシュがその最大サイズを越えたならば、キャッシュがその最小サイズに達するまでページがFIFOで消去される。よって図9.10に示すように、物理メモリは論理的に4つの部分に分割出来る。すなわち、VMSに恒久的に割当てられたページ・フレームと、プロセスの滞在セットを含むページ・フレームと、共用ページ・キャッシュに属するページ・フレームと割当てられていないページ・フレームである。

  • 図9.10 VAX/VMSのメモリの論理的な見え方

 スワップ・アウトされたプロセスがアクティブになる前に、それはその滞在セットを収容するために充分なページ・フレームを割り当てなければならない。もし充分な非割当てのページ・フレームが利用可能でないならば、ある別のプロセスがまずスワップ・アウトされなければならない。通常このプロセスは考慮状態の会話ユーザと対応している。飽和時のスワッピング・レートは量子によって調節される。準備可能プロセスはそれがCPU処理の1量子を得るまでスワップ・アウトされるのにはふさわしくない。
 1つの最後の詳細。実際は、非割当てページ・フレームは共用ページ・キャッシュに追加される。キャッシュは、その最大サイズ・パラメータとVMSとメモリ滞在プロセスが犠牲を出したあと使い残したページ・フレームの数の大きいほうに等しいサイズに達するまで増加することが許される。最大サイズ・パラメータに達した時、更新されたキャッシュ・ページはディスクに書かれるが、これらのページのイメージはメモリ内に残ることを許され、アクセスされれば、ディスクI/Oなしに使用可能になることが出来る。非割当てページ・フレームの概念は主にスワッピング方針の理解に役立っている。


9.6.2.2.待ち行列ネットワーク・モデル」に続きます。