停止は小まめに短く
故障率5%の装置がA、B、2台あるとします。装置Aは平均19時間正常に動いて平均1時間止まります。装置Bは平均38時間正常に動いて平均2時間止まります。
装置Aは、平均20時間(19時間+1時間)の間に平均1時間止まるので確かに故障率5%です。
装置Bは、平均40時間(38時間+2時間)の間に平均2時間止まるのでこれも確かに故障率5%です。
さて、今、工場にこの装置のうちどちらかを導入しようとしていたら、どちらのほうが望ましいでしょうか? 故障率が同じだからどちらを選んでも同じでしょうか? それとも長時間連続して稼動してくれる装置Bのほうが望ましいでしょうか?
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実は、工場の生産性から考えると小まめに止まる装置Aのほうが望ましいのです。それは同じ故障率ならば(ここは大切です)小まめに停止するほうが、工場内の物の流れの変動が少なくなるからです。
「故障と段取りの考慮 」で紹介した式
- ・・・・・(1)
から、そのことが分かります。
は装置処理時間の変動係数であって、これが小さいほどジョブの待ち時間が小さいのでした。ジョブの待ち時間の
式をもう一度、出しておきましょう。
- ・・・・・(2)
- ただし
ここからが大きくなるほどジョブの待ち時間が長くなるのが分かります。
装置Aは平均19時間正常に動く(上の式(1)では故障間隔は指数分布に従うと仮定しています)のですから
です。また故障中の時間は平均1時間ですから
です。よって(これをアベイラビリティとか可動率とか言います。可動率とは「動くことが可能な率(=時間の割合)」という意味です。横道にそれますが、可動率を「カドウリツ」と読むと稼働率と区別がつかないので可動率を「ベキドウリツ」と呼ぶ人もいます。)
です。そうすると式(1)から
- ・・・・・(3)
になります。
装置Bについても同様に計算すれば
- ・・・・・(4)
となります。装置Aと装置Bで
がそれぞれ同じ値であるとすれば、式(4)ののほうが式(3)のより大きいのは明らかでしょう。
もう少し具体的な数字を入れて比較してみます。まず、装置の処理時間はきっちり30分で変動がないものとしましょう。これは
そして
であることを意味します。次に、故障が続く時間も変動がないとしましょう。つまり装置Aではきっちり1時間、装置Bではきっちり2時間であるとしましょう。そうすると、
となります。また、装置は1台であるとします。つまり
です。これらを式(3)(4)に代入すれば、装置Aについては
装置Bについては
となります。ここで、これらの装置にジョブがポアソン過程で到着するとしましょう。つまり到着時間間隔が指数分布に従うとしましょう。そうすると、
- となります。これらのことを式(2)に代入すれば
装置Aについては
装置Bについては
で、結局、装置Bでは装置Aよりジョブの平均待ち時間が
つまり約9%長くなることを意味します。
ですから同じ故障率であれば小まめに止まって小まめに復帰する装置のほうがジョブの待ち時間がより少なくて済むのです。もちろん、故障率がより低い装置があれば、そのほうがより望ましいのですが・・・・。